ボルギ委員長による独自通貨発言でイタリアの国債が急落したが、コンテ首相が火消しに走り買い戻される
10月2日にイタリア下院予算委員会のクラウディオ・ボルギ委員長は、同国は独自通貨を用いれば債務問題を解決できるだろうと発言した。これはつまりイタリアが財政赤字に縛りがあるユーロを離脱し、独自通貨を用いることになれば、イタリアは景気拡大による税収の伸びなどによって債務問題は解消できるという意味であろうか。
これを受けて、2日に外為市場でユーロがドルや円に対して下落、イタリアの国債は大きく値を下げた。イタリアの10年債利回りは3.44%と4年ぶりの水準に上昇した。
もともとボルギ委員長はユーロ懐疑派として知られる。つまり、イタリアがユーロから離脱したほうが良いとの持論をあらためて展開したことになる。ただし、「私の個人的な信念とは関係なく、この政権にはユーロ圏を離れる計画はない」とも述べていた(ブルームバーグ)。
なんとも人騒がせというか市場を騒がせる発言である。現実問題としてイタリアがユーロ離脱すれば景気が回復し、税収が伸びるという保証はない。保証はないどころか、むしろ景気が悪化し、財政問題が再び顕在化してくる恐れもある。
2010年以降、ユーロというシステムを揺るがしたギリシャ問題にして、結果としてギリシャを残すという選択をした。ドイツなど中核国はユーロというシステムを崩壊させたくはない、ギリシャとしてはユーロに残るほうが立て直しも計れるとの見方からのものであろう。
イギリスもEU離脱問題で大きく揺れている。EUの離脱という選択肢を採ったものの、ユーロというシステムにいることによる経済的な恩恵も大きいことから、安易に離脱しづらい。このため英国のEU離脱に関しても先行き不透明感を強めている。美味しいところだけ残すといった選択肢は当然、EU側にとっては許しがたいものであろう。
移民問題などもあり、EUやユーロといったシステムの維持もなかなか難しいものがある。しかし、それ以上にそのシステムに参加している恩恵も非常に大きいものがある。イタリアもユーロに懐疑的な政権が誕生しても、ユーロ圏を離れるという選択肢は採れない。
イタリアのコンテ首相は2日、イタリアがユーロに全面的にコミットしているとし、ユーロに関する批判的な発言は個人的な見解で政府の方針とは関係ないと述べた(ロイター)。さらにコンテ首相は3日、財政赤字の対国内総生産(GDP)比率について、2020年は2.1%、2021年は1.8%とすることを政府として決定したことを明らかにした。ボルギ委員長による発言はあくまで個人的な意見であり、イタリア政府としてはユーロ離脱は考えておらず、債務削減を目指す方針を示した。これを受けて3日のイタリア国債は大きく値を戻し、10年債利回りは3.31%に低下した。