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日本の国債市場の機能が再び低下

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 9月に入ってからの日本の債券市場の動きを確認してみたい。9月3日の現物債はカレント(直近発行された国債)が、2年、5年、10年、20年、30年、40年ともに一本値となっていた。この日の先物の日中値幅(前後場のみ)は9銭。

 4日に日銀は3年超5年以下の国債買入を月額ベースで減少させたが、この日の2年債と5年債、そして10年債カレントは一本値となっていた。先物の値幅は11銭。

 5日の10年国債入札は順調な結果となり、10年債カレントは久しぶりに動いたもののレンジは0.110~0.115%。5年債は一本値、2年債カレントは出合いなし。先物の値幅は10銭。

 6日に今度は日銀は5年超10年以下の国債買入を月額ベースで減額させた。この日の10年債カレントは一本値、2年債と5年債カレントも一本値。先物の値幅は10銭。

 7日は2年、5年、10年、40年カレントは一本値。先物の値幅は10銭。

 10日は月曜日で先物は中心限月の移行を控えていたこともあるが、2年と40年カレントは出合いなし。ほかのカレントは10年債含めて一本値。先物9月限の値幅は5銭となっていた。

 11日の30年債入札は順調な結果となっていたが、落札結果発表時間が何故か遅れていた。ただし市場への影響は限られ、2年と5年のカレントの出合いなく、10年と20年のカレントは一本値。先物値幅は実質的に中心限月となった12月限が7銭となっていた。

 12日は2年、5年のカレントは出合いなく、10年と20年カレントは一本値。先物の値幅は8銭。

 日銀は7月31日に政策の弾力化というか柔軟化を行った。それを受けて一時的に債券相場は動いたものの、再び膠着相場に戻りつつある。8月27日に債券先物の日中値幅が3銭と過去最低に並んだ。それ以降は10銭程度の値幅となっていたが、動きが乏しいことに変わりはない。

 現物債も2年と5年のカレントが出合わない日が多くなり、10年債カレントもかろうじて値がついている状況となっている。10年債カレントが出合わないとなれば一般のニュースともなってしまう懸念があり、なんとかそれは免れている格好となっている。

 日銀は長期金利の目標レンジをこれまでの±0.1%から±0.2%に拡げたとされる。さらに月額ベースの買入を減少させることで、10年債カレントの流動玉もそれなりに出てくることが予想されている。

 このように需給面では多少は緩和されているものの、それでも需給はタイトな状況に変わりなく、ある意味動きようがなくなっている。外部環境をみても米国10年債利回りが3%近くまで上昇してきたが、それもいまのところ材料視されず。10年債利回りはこの水準が居心地が良いのか、それとも中間決算期末なども意識して動きたくはないのか。ただし、このまま膠着相場が続くとも思えないのだが。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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