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9月の日銀金融政策決定会合は現状維持か

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 9月18日から19日にかけて日銀の金融政策決定会合が開催される。前回7月30、31日の決定会合では金融政策の微調整が行われた。この際の公表文のタイトルは「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」となっていた。強力と強化という言葉が入り、金融緩和策の強化のようにみえたものの、この際の政策調整には、リフレ派代表といえる原田委員と片岡委員が反対票を投じていた。

 強化策のひとつともいえる「政策金利のフォワードガイダンス」について日銀は次のように説明していた。

 「日本銀行は、2019年10月に予定されている消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持することを想定している。」

 これに対して原田委員と片岡委員は、次のような反対理由を挙げていた。

 「原田委員は、物価目標との関係がより明確となるフォワードガイダンスを導入することが適当であるとして反対した。片岡委員は、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に達成する観点から、長短金利維持のコミットメントではなく、中長期の予想物価上昇率に関する現状評価が下方修正された場合には追加緩和手段を講じるとのコミットメントが適当であるとして反対した。」

 緩和強化としているにもかかわらず、リフレ派代表といえる原田委員と片岡委員が反対票を投じていることからも、これは緩和策により踏み込んだものではないことが窺える。これには「2019年10月に予定されている消費税率引き上げ」というさほど遠くないタイミングと「消費税率引き上げ」という意外な組み合わせのものを持ってきたことについて、リフレ派がやや懐疑的な見方をしていたとも言えるのかもしれない。

 さらに長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)についても、原田委員と片岡委員は反対票を投じている。

 「原田委員は、長期金利が上下にある程度変動しうるものとすることは、政策委員会の決定すべき金融市場調節方針として曖昧すぎるとして反対した。片岡委員は、物価が伸び悩む現状や今後のリスク要因を考慮すると、10年以上の幅広い国債金利を一段と引き下げるよう、金融緩和を強化することが望ましく、長期金利操作の弾力化は「ゼロ%程度」の誘導目標を不明確にするとして反対した。」

 原田委員と片岡委員は長期金利の操作目標の柔軟化には反対であり、むしろ長期金利の操作目標を引き下げて、金融緩和強化を主張している。債券市場の機能低下などたぶん眼中にはなく、長期金利を引き下げて、どのような経路で物価が上昇するという経路についても曖昧であるが、緩和ありきの姿勢を貫いている。

 それはさておき、9月18日、19日の日銀の金融政策決定会合では、金融政策は7月の修正の影響を見極めたいと現状維持となることが予想される。7月会合以降の長期金利は当初、乱高下したが、その後は落ち着いている。まだ柔軟化したレンジの上限を試すような動きも出ていない。このため、当面は様子をみるためとして現状維持が予想される。

 前回反対票を投じた原田委員と片岡委員は今回も反対票を投じるとみられる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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