政府の支援でキャッシュレス化は進むか

(写真:Shutterstock/アフロ)

 8月21日付けの日経新聞によると、「政府はモノやサービスの決済の電子化(キャッシュレス化)を進めるための支援に乗り出す。スマートフォン(スマホ)で読み取るQRコードを使った決済基盤を提供する事業者に補助金を供与し、中小の小売店には決済額に応じて時限的な税制優遇を検討する」そうである。

 すでに中国などではQRコードを使った電子決済が進んでいる。しかし、日本ではキャッシュレス化が遅れており、その比率は20%程度に過ぎない。このため訪日外国人旅行客の4割程度が現金主体での利用について不満を持っていると言われる。

 経産省によるとクレジットカードや電子マネーなど日本のキャッシュレス決済の比率は2015年時点で18%。韓国の89%や中国の60%、インドの38%に比べて低い。

 訪日外国人旅行客向けというだけでなく、日本国内での現金利用のコストを抑えるためにも日本でのキャッシュレス化は必要となろう。

 すでにいくつものQRコード決済のアプリは開発されているが、その利用はいまだ限られている。日本国内では現金への信用度が高い上に、国内至る所で安心して現金が使えるインフラが整備されている。

 店舗にとっても手数料が取られるクレジットカードの利用よりも、現金での取引の方が好まれている面もあろう。このため、政府は時限的な税制優遇を検討するとしているが、これが起爆剤となってキャッシュレス化が普及するのであろうか。

 それには現金同様にいたるところで使え、しかも現金同様に信用のおける決済手段である必要がある。

 そうであればスウェーデンのように大手銀行と政府が組んで、統一したシステムを構築して、QRコード決済アプリを普及させることが必要ではないかと個人的には思っている。

 すでに使われているQRコード決済のアプリについては、中国などのような独占的なものが生まれておらず、あくまで実験的なものとなっている。

 ただし、日本国内でのスマホの利用は当然ながら海外に比べて引けを取ってはいない。クレジットカードも利用されており、電子マネーも普及している。つまりQRコード決済についても、何かしらの起爆剤があれば、一気に普及しうる環境にある。

 今回の政府の動きもそれを後押しするものになると思うが、問題は我々が安心して使えそうなアプリそのものの必要となる。各企業がそれぞれ独自のアプリを乱立させている今の状況からは統一的なアプリは生まれそうにない。このあたりは政府が主導して銀行などとともに統一アプリの普及を進める必要があるのではなかろうか。

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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