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日銀の総資産が日本のGDPを上回る。これで良いのか

久保田博幸金融アナリスト
総務省と日銀のデータを基に著者作成

 日銀が14日に発表した営業毎旬報告によると、日銀の保有資産が548兆9408億円となり、2017年の名目GDPの546兆円を上回ったことがわかった。日銀の総資産が通年ベースのGDPを上回るのは初めてとなる(時事通信)。

 日銀の保有資産の内訳を見るまでもなく、その多くを占めているのが国債であり、466兆円もの国債を保有している。これほど多くの国債を日本の中央銀行である日銀が保有しているのは何故なのか。

 危機的な財政状態に陥っている日本政府を助けるためなのか。政府は日銀が大量に国債を買い入れている上、長期金利まで抑え込んでいるので、助かってはいるが、これが主目的ではない(はずである)。もしこれを目的とするとなれば、財政ファイナンスとなってしまう。

 危機的な日本の財政状態により、日本国債に売りが集中してしまったため、日銀が買い手となっているのか。それも違う。日本国債は日銀が大量に購入する以前も、投資家の買いによって順調に消化されており、国債利回りが急騰(国債価格が急落)するようなことはなかった。

 それでは世界的な金融経済危機、いわゆるリーマン並みの危機が訪れていたため、非常時というか有事対応で日銀が国債を購入することで資金供給を行っていたのか。それも違う。アベノミクスと呼ばれたものが始まったタイミングは、まさにそのような世界的危機が沈静化に向かっていた最中であった。

 それならば何故、これほどまでの国債を購入して日銀の資産がGDPを超えるまでになってしまったのか。それはこれだけ中央銀行が大胆に国債を主体に資産を買い入れれば、物価が2%を超えて上がるという説を鵜呑みにした政府の意向によるものであった。

 その結果はどうなったのか。日銀の物価目標は異次元緩和導入後、5年経過しても達成する気配はなく、日銀もその物価目標達成時期を更に先送りしている状況にある。そろそろ、日銀の大量の資産買入と物価とは連動していないことを素直に認めた上で、資産の買入を停止し、これ以上の中央銀行の資産水ぶくれ状態を解消することを意識すべきときなのではなかろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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