リーマン並みとの懸念で二度も延期された消費増税は、今度こそ実施されるのか。
2014年4月1日、安倍内閣時に消費税は5%から8%に引き上げられた。これは消費税増税の3党合意によるものであった。この消費増税により、個人消費が伸び悩み、アベノミクス効果を阻害したとの見方があった。
日銀が2013年4月4日に量的・質的緩和策を決定し、日銀の物価目標となる消費者物価指数はマイナス圏にあったものがコア指数で翌年4月にはプラス1.5%まで上昇した。しかし、そこでピークアウトした。これは消費増税による影響というよりは、アベノミクスの登場による急激な円高調整と株高が一服し、消費増税にむけた駆け込み需要の反動などが大きかったと言える。
2014年11月に安倍首相は2015年10月に予定していた消費税率10%への引き上げの延期を決定した。2008年9月のリーマン・ショックによる世界的な金融経済危機時と同様の事態となったとして、2017年4月まで1年半延期したのである。この方針を国民に問うとして衆院解散・総選挙に踏み切る考えを表明した。結局、自民党が選挙で勝ったわけではあるが、国民がリーマン・ショック並みの危機感を持っていたのかといえば、それは疑問である。
2016年10月には消費税率10%への引き上げを2017年4月から2019年10月に「再延期」する税制改正関連法が成立した。安倍首相は「新興国や途上国の経済が落ち込んで、世界経済が大きなリスクに直面しており、こうした認識を伊勢志摩サミットで世界のリーダーたちと共有した」としていた。本当に世界のリーダー達がそのような危機感を共有していたのであろうか。米国の中央銀行であるFRBは2016年12月にも利上げを決定していた。このときもそれほどの危機などは訪れておらず、世界経済の拡大基調は継続していた。
財政規模が大きく膨らんだこともあり、2020年のプライマリーバランスの黒字化目標の達成も実質上不可能となっている。消費税を上げたからといって財政健全化が進展しているわけではない。政府が本気になって財政健全化に取り組まないと、消費増税による効果も軽減されてしまう。
財政健全化などの警告灯ともいえる日本の長期金利は、7月31日の日銀の金融政策決定会合で長期金利の誘導ゾーンが拡大したと言ってもせいぜい0.2%までとなっている。長期金利は日銀による長短金利操作付き量的・質的緩和策によって抑え込まれてしまっている。
2019年10月には、余程の事態が起きない限り、リーマン並みとして消費増税を延期することは、さすがにできないであろう。しかし、その影響の軽減策が結果的に財政健全化にブレーキを掛けることにもなろう。本当にこれで良いのであろうか。財政健全化のための消費増税であったはずが、建前上は増税を行うとしても、結果として財政健全化に寄与するのか。国民としても増税はしてほしくはない。しかし、日本の財政悪化が将来の不安を感じさせていることも事実である。日本の財政の潜在リスクは見えないところで膨らんでいるようにも思えてしまうのであるが。