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トランプ大統領がFRBの利上げを牽制?

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 米国のトランプ大統領は19日、CNBCテレビのインタビューで、中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)が進める利上げ方針に「必ずしも同意しない。感心しない」と発言、追加引き上げを牽制した(時事通信)。

 「我々の通貨は上昇している。それは我々を不利な状況に置いている」として、利上げ継続を背景にしたドル高の動きに不満を表明した(日経新聞電子版)。

 米国の景気拡大が継続していることを背景にFRBは漸進的な利上げを行っているが、米国の景気拡大を利上げが裏付けているともみえるため、FRBに対して利上げを抑制させるような動きをトランプ大統領が取っていないものとみていたが、そうではないようである。

 たしかに今回のようなトランプ大統領の発言は、これまでになかったわけではない。利上げは好きではない、ドル安が好ましいと言った発言はこれまでにもみられた。しかし、自ら選んだパウエル議長率いるFRBの利上げに対し、これほどあからさまな表現をしたのは珍しい。

 トランプ大統領は「一般市民だったら言ったであろうことを言ったまで。大統領としては言うべきではないといさめる人もいるだろうが、少しも気にしない」とも発言したそうである(日経新聞電子版)。

 これまで大統領がなぜ金融政策に言及するのを控えていたのかといえば、政治が中央銀行の金融政策に絡むとあまりろくな事がなかったためである。政治家は国民の支持を得たいがために、金融引き締めを嫌い金融緩和を求める。

 過去にもジョンソン政権がウィリアム・マクチェスニーFRB議長に、ニクソン政権がアーサー・バーンズFRB議長に、それぞれ金融緩和政策の採用を迫ったことが1970年代のインフレの要因だとされている(WSJ)。

 ただし、今回のトランプ大統領のFRBの利上げ牽制発言がどれだけ本気で、それが果たしてFRBの政策に影響を与えるのかという点はなかなか微妙なところとなる。

 CNBCによると、ホワイトハウスは同社に対して「大統領は当然、FRBの独立性を尊重している」との見解を示すとともに、「(インタビューでも)FRBの政策決定には干渉しないと話している」と強調した(日経新聞電子版)。

 ちなみにある国の中央銀行は、時の政権から金融政策への牽制どころか、2%の物価目標を迫られた上に、アコードなるものを締結し、大胆な国債買入を主体とした異次元緩和を行っているようである。これでインフレが起きたわけではないものの、禁断の地に踏み込み、大きな歪みを起こしていることは間違いない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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