Yahoo!ニュース

アマゾンが日本の物価を引き下げている?

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 日銀は6月5日に「インターネット通販の拡大が物価に与える影響」というレビューをサイトにアップした。

 日本に限らず、欧米の物価もなかなか上昇してこない。米国は消費者物価指数などがやっと2%台に乗せてきたものの、イエレン前FRB議長は物価の低迷について、これを「謎」と称した。その理由のひとつにIT化による影響が考えられる。特にアマゾンを中心としたインターネット通販が物価の押し下げ要因になっている可能性がある。

 日銀のレビューでも次のような指摘がある。

 「アマゾンなどのインターネット通販の急速な拡大が、スーパーなど既存の小売企業が直面する競争環境を厳しいものにし、値下げ圧力にもつながっているという声が多く聞かれるようになってきている。」

 実店舗を持たず人件費も節約可能なインターネット通販での価格は、確かに実店舗の表示価格に比べて安いことが多い。以前には特に家電商品でみられ、ネットで調べた価格を店頭の商品購入の際に提示して、価格の引き下げ交渉をするといった光景も見られた。

 アマゾンなどのネット販売の拡大は、家電だけでなく広範囲の商品についても価格の引き下げを可能にしつつある。アマゾンではプライム会員などを主体に送料も無料化するなどしており、種類豊富な選択肢があり、実店舗より安い価格の商品が、家に直接届く仕組みになっている。

 それではこのアマゾンなどのインターネット通販の拡大がどのような経路で物価に影響を与えているのか。日銀のレビューは下記のように解説している。

 「わが国の消費者物価指数(CPI)においては、原則としてインターネット販売価格は価格調査の対象となっていない。このため、インターネット販売価格の変動自体がCPIに直接影響を与えるわけではない。」

 「しかし、インターネット通販の拡大を受けて競争環境が変化すれば、既存の小売企業の一部が対抗措置としての値下げを行うことで、結果的にCPIで計測される物価が下押しされる可能性はある。」

 家電では昔、ヤマダ電機の価格がひとつのベンチマークとなっていたと言われたことがあった。現在ではアマゾンの価格がベンチマークとなっているとしてもおかしくはない。結果としてそれが物価の下押し要因となっている可能性は否定できない。これは日本国内だけでなくグローバルで起きていることでもある。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

牛さん熊さんの本日の債券

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月20回程度(不定期)

「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、当日の債券市場を中心とした金融市場の動きを牛さんと熊さんの会話形式にてお伝えします。昼には金融に絡んだコラムも配信します。国債を中心とした債券のこと、日銀の動きなど、市場関係者のみならず、個人投資家の方、金融に関心ある一般の方からも、さらっと読めてしっかりわかるとの評判をいただいております。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

久保田博幸の最近の記事