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米朝首脳会談の中止?による市場への影響はどうであったのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 米国のトランプ大統領は、来月12日にシンガポールで開く予定だった米朝首脳会談を中止すると発表し、非核化に向けて北朝鮮に最大限の圧力をかけ続けると強調した。その一方で、北朝鮮の対応次第では首脳会談が開催される可能性はあるという考えを示した(NHK)。

 米朝首脳会談中止の報を受けて、北朝鮮の地政学的リスクが再燃かとの思惑から、24日の欧米市場ではリスク回避の動きを強めた。欧米の国債は買われ、円高が進み、欧米の株式市場は下落した。

 24日のダウ平均は一時280ドル安となったものの、その後下げ幅を縮小させ引けは75ドル安となった。ナスダックも同様に下げ幅を縮小させて1ポイント安に。米債も同様に2.95%近くまで利回りが低下後、2.97%あたりまで戻していた。

 これらの動きを見る限り、米朝首脳会談の中止により、市場ではパニック的な動きとはならなかった。これは米朝首脳会談が完全に中止となったわけではなく、ひとまず6月12日の会談は止めるとの見方によるものか。さらに市場では、ここにきての北朝鮮側からの動きなどから、6月12日の会談は本当に行われるのかと疑心暗鬼になっていた面もあり、やっぱりかとの認識から「予想外」ということでの落ち着いた動きになったものとみられる。

 これによって再び米国と北朝鮮は、中国や韓国などを巻き込んで、腹の探り合い合戦が再開された。米国のトランプ大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長という、なかなかの強烈な個性のぶつかり合いに、中国も絡んできているようで、先が見通せないことも確かである。いまのところ軍事衝突となる懸念がそれほど高まっているわけではない。しかし、今後の動向次第では再び緊張が高まる懸念もある。

 そういったところに、韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が、26日に南北の軍事境界線にある板門店の北朝鮮側の施設で首脳会談を開催したと伝えられた。史上初の米朝首脳会談の実現に向けて意見を交わしたとされる。6月12日の米朝首脳会談は開催される可能性も出てきた。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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