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3月も海外投資家が日本国債を大量買い越し

久保田博幸金融アナリスト
日本証券業協会のデータを基に著者が作成

 4月20日に発表された3月の公社債投資家別売買高によると短期債を除いた数値で、都銀は1796億円の買い越しとなった。2月の8099億円の買い越し、1月の2兆3756億円の買い越しに比べると買越額は減少しつつある。国債の投資家別売買高をみると都銀は、中期を2591億円売り越していたが、長期は4207億円の買い越しに転じ、超長期も573億円の買い越しとなっていた。

 これに対して海外投資家は3月は1兆7688億円の買い越しとなり、2月の9769億円の買い越しからさらに買い越し額を膨らませた。海外投資家の短期債を除いたものとしての1月の売り越しは2014年6月以来となっていたが、これは一時的な売り越しとなっていたようである。海外投資家は3月に中期債を9899億円買い越し、長期債を5593億円買い越し、超長期債を1568億円買い越しとなっていた。

 「その他」は今回も2兆477億円の売り越しとなった。2月の2兆2128億円の売り越し、1月の2兆2640億円と同様に2兆円を超す大幅売り越しとなっていた。今回も中期債を1兆円以上売り越している。「その他」は主に政府関係機関であり、ゆうちょ銀行やかんぽ生命も含まれており、金額からみて、ゆうちょ銀行による売り越しとみられる。

 債券相場は1月の下落基調から、2月は回復基調となっていた。米株はボラティリティが低い状態で長らく上昇基調が継続しており、これはゴルディロックス相場(適温相場)とも呼ばれていたが、その反動が起きた。日本の株式市場も動揺し、日本の債券はリスク回避のような動きともなって上昇基調となった。しかし、その債券相場の反発も3月に入りブレーキが掛かってきた。3月2日には黒田日銀総裁による「2019年度ごろ出口を検討していること間違いない」とも発言で乱高下したが、その後は落ち着きを取り戻した。債券先物は151円台に乗せる場面はあっても戻り売りに押され、方向感に乏しい展開となって期末を迎えた。

 公社債投資家別売買状況の下記データは、全体の数字と短期債の数字となっているため、短期債を除く債券のデータについて全体から短期債を引いた。ここには国債入札で購入した分や日銀の国債買入分は入っていない。

公社債投資家別差し引き売買高 ()内は国債の投資家別売買高の超長期・長期・中期別

都市銀行 -1796(-573、-4207、2591)

地方銀行 2517(-628、1905、81)

信託銀行 -4125(-2664、1538、-2517)

農林系金融機関 -1920(-2020、96、0)

第二地銀協加盟行 1276(561、299、0)

信用金庫 1781(984、1209、5)

その他金融機関 -1314(75、206、-320)

生保・損保 -4345(-3733、172、317)

投資信託 -1261(-1046、313、-259)

官公庁共済組合 -175(-134、6、0)

事業法人 -823(-25、-174、0)

その他法人 -1079(-109、-103、31)

外国人 -17688(-1568、-5593、-9899)

個人 250(1、24、3)

その他 20477(1973、6028、15657)

債券ディーラー -1125(147、-1144、-37)

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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