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経済産業省はキャッシュレス・ビジョンを策定、日本でキャッシュレス化を進めるにはどうしたら良いのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 経済産業省は「キャッシュレス・ビジョン」を策定した。検討会では、大阪・関西万博(2025年)に向けて、「支払い方改革宣言」として「未来投資戦略2017」で設定したキャッシュレス決済比率40%の目標を前倒しし、より高い決済比率の実現を宣言する。さらに将来的には、世界最高水準の80%を目指していくとしている(経済産業省のサイトより引用)。

 経済産業省によると、キャッシュレスの推進は、消費者にとっては多額の現金を持たずに買い物が可能になることや、紛失等のリスクが現金に比べて軽減されること、事業者にとっては現金管理コストの削減による生産性向上など、様々なメリットが期待されるとしている。また、「キャッシュレス推進協議会(仮称)」において、オールジャパンの取組として産官学が連携して進めていくとしている

 日銀の雨宮副総裁は、4月16日のIMF・金融庁・日本銀行共催 FinTechコンファレンスにおける挨拶で次のような発言をしている。

 「中央銀行がデジタル通貨を自ら発行するとなると、単純化していえば、一般の家計や企業が中央銀行に直接口座を持つことになります。そうなると、只今申し述べた通貨制度の二層構造や、民間銀行を通じた資金仲介などに、大きな影響を及ぼす可能性があります。」

 スウェーデンやエストニアなどでは中央銀行がデジタル通貨の発行を検討しており、ウルグアイではデジタル通貨の試験運用を開始している。日銀もデジタル通貨の基盤技術の研究など進めているようだが、日銀が自らデジタル通貨を発行することに対しては積極的ではない。そもそも日銀に国民全部の口座を設けことには無理がある。

 ここにきてキャッシュレス化に関するニュースがいくつか出てきている。たとえばセブンーイレブンが、スマートフォンで支払いができる独自の決済サービスを来年春をめどに導入する。イオンとビザ・ワールドワイド・ジャパンはキャッシュレス決済で連携した。また、少し前だが、メガバンク3行が、スマートフォンなどで手軽に支払いができるQRコード決済で規格を統一し、連携する方針を固めたとも伝えられている。

 しかし、このままではバラバラにモバイル決済が導入されることになり、これでは現金が使いやすい日本で普及を進めるのは難しい面がある。これに対し、スウェーデンのように大手行などが共同で開発して単一のモバイル決済の仕組みを作れば、日本でもモバイル決済が普及する可能性がある。中国のモバイル決済も「アリペイ」などに集中している。日本でも普及させるとなれば、経済産業省などが主導するなどして単一のモバイル決済の仕組みを作る必要があるのではないかと思われる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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