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ドル円がここにきて反発してきた理由

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 外為市場では、ここにきて円高の修正のような動きとなっている。ドル円は3月22日の104円60銭台あたりが目先のボトム(底)となり、じりじりと反発し20日に107円後半あたりまで上昇している。ユーロ円も3月22日に一時129円を割り込んだが、そこから反発し19日に133円に接近している。

 ユーロ円は133円台を抜けてくるとチャート上からは、135円あたりまであっさりと上昇してくる可能性がある。また、ドル円も108円台あたりを抜けてくると110円あたりまで上昇してくる可能性が出てきた。

 今年に入りドル円は113円台あたりから下落トレンドとなり、3月22日に104円60銭台まで下落した。1月のドル円の下落の背景としては、日銀による国債買入の縮小、ムニューシン財務長官によるドル安を歓迎する発言、黒田日銀総裁による、(物価が)ようやく目標に近い状況にあると思うとの発言があった。市場が日銀の政策に過敏になっていた面もあるが、米国政府の本音が垣間見えたことで円高が進んだ。

 日銀は1月31日に中期ゾーンの国債買入を増額した。そして、2月に入りダウ平均は5日に記録的な下げとなりゴルディロックス相場(適温相場)が変調をきたし、米国を主体に株式市場が一時的な調整局面を向かえた。これによりリスク回避の動きを強め、円高が進行した。日銀は2月28日に超長期国債の買入を減額した。

 3月1日にトランプ大統領は、中国の過剰生産によって安く輸入されている鉄鋼製品が米国の安全保障の脅威になっているとして、25%の高い関税を課す異例の輸入制限措置の発動を正式に決める意向を明らかにした。これを受けて米中の貿易摩擦への懸念が強まり、リスク回避の動きから円高が進む。

 ドイツの政党の連立交渉、イタリアの総選挙などもリスク要因となったが、韓国と北朝鮮が首脳会談を開くことで合意したとのニュースが飛び込んできた。このあたりからやや地合が変化してきたように思われる。

 ただし、異例の輸入制限措置の発動により、中国との貿易摩擦の強まりとともに、北朝鮮と米国の緊張が再度高まる懸念も出てきたことで、金融市場ではリスク回避の動きを急速に強めたのが3月22日となった。

 米中がそれぞれ報復措置をとるなど貿易摩擦が激化するのではとの懸念が強まったが、トランプ政権の幹部らから貿易戦争を回避する時間は十分にあるとの発言との発言に加え、中国の習近平国家主席が昨日の講演で、自動車の関税引き下げや金融市場の開放、年内に一部製品の輸入関税を引き下げる方針を表明したことで貿易摩擦の懸念が後退。このあたりから円高圧力も後退してきたように思われる。

 今回の日米首脳会談でも為替に関してはそれほど強い表現はなく、米株も回復基調となったことなどもあり、さらに北朝鮮の地政学的リスクが後退かとの見方も強まったことで、過度なリスク回避の動きは後退してきた。さらに米長期金利の上昇なども手伝って、ここにきての円高修正の要因となっているとみられる。ここからの動きの鍵のひとつとなりそうなのが、北朝鮮との首脳会談も控えたトランプ政権の動向かと思われる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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