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債券先物が日銀総裁発言に過剰反応したのは、AIの判断ミス?

久保田博幸金融アナリスト
黒田日銀総裁(写真:ロイター/アフロ)

 日銀の黒田東彦総裁は3月2日に政府による次期日銀総裁の再任案が国会に提示されたことを受け、衆院議院運営委員会で所信の表明と質疑を行った。

 黒田総裁は再任された場合は「物価2%目標実現に向けた総仕上げに全力を尽くす」と強調し、「必要ならさらなる追加緩和も検討する」と明言した。

 「金融緩和や引き締めは、無限に続くわけではない」との発言もあったようだが、これは見方によれば、現在の異次元緩和策も永遠に続けるつもりはないとも取れる。当然と言えば当然の発言ではある。しかし、黒田総裁が当たり前のことを発言しても、市場はそれを緩和にブレーキを掛ける可能性もあるのかとの読みとなってしまう場合もある。

 市場参加者が最も関心のあるのが日銀の出口政策である。FRBやイングランド銀行は出口政策を進めつつあり、ECBも追随してくるとみられているなか、日銀は出口を封印しているかに見えるためである。

 この出口政策についても国会議員から質問が出るとしても当然である。これに対して黒田総裁は、「2019年度ごろに物価が目標とする2%に達すれば、出口を検討、議論していくことは間違いない」と発言した。

 日銀は今年1月に発表した経済・物価情勢の展望、いわゆる展望レポートで、「2%程度に達する時期は、2019年度頃になる可能性が高い」としており、この展望のとおりに物価が2%に達していれば、出口を検討、議論するのは当然ともいえる。

 「物価2%が遠い現段階で出口政策を議論することは市場の混乱を招き、適切ではない」とも黒田総裁はこの場で強調していた。あくまで「出口に差し掛かった段階で議論し、市場とのコミュニケーションを図っていくことになる」と述べていた。ただし、「出口の要素について常に考えをめぐらせているのは事実」とも発言した(ロイターの記事より一部引用)。

 この黒田総裁の発言についてブルームバーグは「黒田日銀総裁:19年度ごろに出口を検討していること間違いない」とのタイトルで記事を出した。このタイトルに2日の市場が過剰反応したようにも見えた。外為市場ではドル円が大きく下げていたが、債券先物も日中ながらも50銭以上下落したのである。

 ここにきて債券先物は日中の動きが10銭に満たないことも多く、50銭も動くというのは異常であった。現物債も売られ10年債利回りも0.040%から0.080%に上昇したが、債券先物に引っ張られた格好であり、何かが起きていたのは債券先物であったように思われる。

 今回の黒田総裁の発言に過剰に反応した要因のひとつとして、これまで頑なに出口についてあまり語らなかった黒田総裁が、物価目標を達成するという前提ながらも出口について言及した面も大きい。このため記事のタイトルが前提は抜けていたが、「19年度ごろに出口を検討していること間違いない」となったことで、この言葉に債券先物が反応した。

 これはコンピュータを使った自動取引、いわゆるHFT(High frequency trading)が反応したのではないかと思われる。特に債券市場で先物が先に動いたことからも、その可能性が高いように思われる。

 ただし、今回の黒田総裁の発言内容はこれまでの発言や金融政策の流れそのものと矛盾するものではなく、あくまで黒田総裁が出口という言葉を発したことが珍しいことであったに尽きる。特に政策変更など示唆したわけではなく、過剰反応といえよう。債券先物は翌営業日となる5日に買い戻され、下落前の水準近くまで戻していた。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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