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パウエル新体制となったFRB、株安で前途多難な船出なのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル理事は5日にFRB本部内で宣誓式を行い、第16代議長に正式就任した。任期は4年となる。2018年の理事ポストは正副議長を含めて7名となるが、イエレン前議長の退任により、現在4つが空席という事態となった。

 議長はパウエル氏となり、副議長は昨年10月に就任したクオールズ氏(銀行監督担当副議長)。もうひとりの副議長についてはエコノミストを登用するとされ、トランプ政権による人選が行われているようだが現時点では未定となっている。

 理事としてはブレイナード理事だけとなっており、グッドフレンド氏は議会の承認待ち。これにより理事ポスト7名のうち3席しか埋まっていない。また、常任理事となるとニューヨーク連銀総裁も加えて8名となるが、ニューヨーク連銀のダドリー総裁も2019年1月の任期を前倒しして2018年半ばに退任すると発表している。このため、こちらも入れ替わる可能性が高い。このように今年は中核メンバーがかなり入れ替わる。

 2018年に投票権を持つ地区連銀総裁は、メスター・クリーブランド連銀総裁、ボスティック・アトランタ連銀総裁、ウイリアムズ・サンフランシスコ連銀総裁となる。もうひとつのリッチモンド連銀の総裁は昨年までラッカー氏が務めていたが、2017年4月に辞任した。その後、コンサルティング会社マッキンゼーのトーマス・バーキン氏が同連銀により指名され、今年1月に総裁に就任している。

 パウエル議長就任のタイミングで、ニューヨーク株式市場は記録的な下げとなり、前途多難な船出のように見えるが、そもそも記録的な下げを生み出すほどに株価が記録的な上昇をしていたともいえる。それにはFRBの功績というか、大胆な金融緩和による過剰流動性相場と、その大胆な緩和策も奏功して世界的な金融経済リスクの後退による景気拡大による業績相場によるところも大きい。

 FRBは先んじて出口戦略を講じてきたが、そのペースは極めて慎重となり、物価の上昇も抑制されていたことも相まって長期金利も低位での推移が続いていた。これも株価にとっては安心材料となっていたが、ここにきてやや長期金利が上昇ピッチを早めたこともあり、株価は調整局面を迎えたといえる。しかし、これが実態経済に大きく影響するとは、いまのところは考えにくい。そもそも景気の悪化などが株価下落の要因となっていたわけでもない。今回の調整がどの程度の深さとなるのかはいまのところ予測が難しいものの、FRBの利上げペースがこれでブレーキが掛かることも考えづらい。パウエル議長率いるFRBも淡々と正常化路線を歩むのではないかと予想される。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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