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9日に日経平均が乱高下、これはピークアウトを示唆したのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 11月9日の東京株式市場は商いを伴って乱高下した。8日の米国株式市場は主要3指数が過去最高を更新し、9日の東京株式市場は買いが先行し、日経平均は75円高で寄った。その後、さらに上げ幅を拡大させて日経平均は400円を超す上昇となった。ただし、これだけ上昇するほどの材料は見当たらなかった。これは勢いに乗って株価をつり上げるような動きにもみえた。

 午後に入り地合は急転する。12時過ぎに利益確定売りに押され、いったん切り返したものの戻り切れず、13時過ぎあたりから再び売りが持ち込まれ、日経平均は高値から800円を超す下げとなった。

 その後、引けにかけては買い戻しの動きも入ったことで、日経平均の引けは45円安となった。9日の東京株式市場の売買代金は5兆円近くとなり、2014年11月以来の高水準となった。

 9日の東京株式市場の動きは、何かしらの相場を動かす材料があってのものではなく、売り買いのポジションがぶつかり合う展開となっていた。相場上昇を牽引してきた海外投資家、特に短期売買を中心に行っているヘッジファンドによる仕掛け的な動きも絡んでいたものとみられる。

 相場が大きく動いているときには、相場感そのものがぶつかり合う。特に上昇相場が長く続き、25年ぶりの水準を更新となれば、新たなトレンド入りが意識される。それとともに、高値警戒も当然出てくる。このあたりの不安心理を突くような仕掛け的な動きと言えなくもない。

 9日の米国株式市場では、米上院共和党が税制改革案で法人税減税を2019年に先送りすると報じられ、米税制改革の先行き不透明感が強まり、米国株式市場は利益確定売りに押された。こちらはそれなりの材料があっての売りとなっていた。

 外為市場では9日の日経平均の急反落でドル円が下落し、日経平均は少し戻していたが、ドル円は戻り切れていない。これもあって10日の東京株式市場は売りが先行した。

 しかし、今回の日経平均の乱高下は相場のピークアウトを示すものとは思えない。9月初めから始まった日経平均の上昇トレンドであるが、途中の調整がほとんど入っていなかった。その意味では今回の下落は買い方がいったん売却を行って一息つく、いわゆる調整局面とみられる。

 外部環境は特に大きな変化はない。米国の法人税減税についても、これが相場を持ち上げる主要因となっていたわけではない。今回の米国株式市場の上昇はトランプ相場と呼ぶ人もいるが、トランプ政権はいまだ公約すら実現していない。トランプ政権の政策が景気の回復をもたらしたわけではなく、景気の回復期にトランプ政権がたまたま誕生しただけとみた方が良い。

 米国の景気は雇用を主体に回復基調が継続している。これが続いている限りはまだ上昇相場は継続すると思われる。インフレの兆候がほとんど見えないことも、日米欧の中銀による緩和効果も意識され、今回の相場上昇が長続きする要因になっている。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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