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カナダ銀行(中央銀行)も利上げを模索

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

カナダの中央銀行であるカナダ銀行(Bank of Canada)のウィルキンス上級副総裁は6月12日のマニトバ州ウィニペグでの講演で、国内の景気回復が各地域やセクターに広がっていると強調し、政策当局者に「勇気づけられる理由」を与えていると述べたそうである。経済が勢いを増しつつある中、利上げの準備が整っていると、これまでで最も強い調子で示唆した。また、ポロズ総裁も13日、CBCラジオに対し、利下げは経済をショックから守るという役割を果たしたとの認識を示し、「足元の経済は勢いを強めつつあり、それも特定の分野ではなく幅広い経済でそうした状況と見受けられる」と述べていた(以上、ブルームバーグの記事より引用)。

カナダ銀行は今年1月18日に「利下げ」を検討したことが明らかになっていた。1月20日にトランプ氏が次期米国大統領に就任したが、これによる影響なども考慮していた可能性がある。しかし4月にカナダ銀行が政策金利を据え置いた際、ポロズ総裁は記者会見で、今回は「利下げ」は議題に上らなかったと明言しており、ハト派的なトーンは後退し、「中立的な立場」であることを明らかにしていた。5月24日の会合でも金融政策の据え置きを発表し、カナダ銀行は2015年7月以来、約2年間、政策金利を0.5%に据え置いている。

今回のウィルキンス副総裁やポロズ総裁の発言からは、利下げによる効果が発揮されて、国内の景気回復が顕著となりつつあるなか、今後は中立的なスタンスからの変更を検討する可能性が示された。もしカナダ銀行の「利上げ」となれば2010年以来となる。ウィルキンス副総裁はトロント住宅市場のバブルを巡る懸念は一蹴したそうだが、このあたりの懸念も背景にあるのかもしれない。

今後のカナダ銀行の金融政策を決める会合の予定は、6月はなく、7月12日、9月6日、10月25日、12月6日となっている。市場ではウィルキンス副総裁らの発言を受けて10月の会合で利上げを決定するのではとの見方が強まっているようであるが、そこまで待たずに決定する可能性もありそうである。

ちなみに現在のイングランド銀行のカーニー総裁は、元カナダ銀行の総裁である。そのイングランド銀行がFRBに続いて正常化に向けて舵を切るかとみていたが、EU離脱決定の影響もあり、ひとまず先送りされ、古巣のカナダ銀行が先に利上げを行う可能性が出てきた。ただし、15日のイングランド銀行の金融政策委員会(MPC)では、フォーブス委員だけでなくマカファーティー、ソーンダーズ両委員が利上げ派に加わり、5対3の僅差での現状維持決定となっていた。カナダ銀行とイングランド銀行の利上げ合戦の行方は、意外に良い勝負となるやもしれない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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