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来年5月の国債決済期間の短縮に合わせ、国債の発行日もT+1に

久保田博幸金融アナリスト
(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

財務省は新発国債の入札から発行までの「決済期間」について、入札の翌営業日にそろえる方針だと5月31日の日経新聞が報じた。

国債など有価証券の取引には約定日(売買した日)と決済日(資金と証券の受渡日)が存在している。これは入札における入札日と発行日の関係と同じものとなる。

国債の決済に関しては、2012年4月23日約定分から「T+2」に決済を行うようになった。つまり売買約定日から起算して原則3営業日目の日に受渡し決済を行っている。

このため国債入札に関しても5年債、10年債、20年債、30年債については、入札日を含めた3営業日目の日(T+2)が発行日となっている。ただし、3月、6月、9月、12月のいわゆる国債の償還月については、20日が発行日となっている(20日が休日の場合は翌営業日)。

償還月の発行日が20日となっているのは、償還を迎えた国債への再投資を円滑に進めるなどの理由があった。ただし、これだと入札日から発行日までの期間が大きく空いてしまうことになる。たとえば今日6月1日入札の10年国債の発行日は6月20日である。これに対して5月9日に入札された10年国債の発行日は11日であった。

償還月の発行日が20日となっていることで、実は日銀の国債買入にも影響が出ていた。日銀は発行されていない国債を購入することはできない。つまり発行日を過ぎないと買入対象とならないのである。償還月に際しては20日まで日銀が買入対象にできないため、国債を入札した業者は期間リスクを負うことになる。

また2年債については償還月等に関わらず、入札日のあった月の翌月15日が発行日となる。これは年金支払いに併せていたもののようである。

国債の決済についてはT+1に向けての検討が進められている。つまり売買約定日から起算して原則2営業日目の日に受渡し決済を行うことが検討されている。日本証券業協会の国債の決済期間の短縮化に関する検討ワーキング・グループの報告によると国債取引の決済期間T+1化については平成30年5月1日(火)約定分から実施することを予定している。

「国債取引の決済期間T+1化等の実施予定日について」日本証券業協会

http://market.jsda.or.jp/shiraberu/saiken/content/jisshiyoteibikouhyou.pdf

この国債決済のT+1化に合わせ、国債の入札についても発行日をT+1、つまり入札の翌営業日にすることになる。その際、これまで20日としていた償還月の発行日もT+1に統一する予定とみられる。ただし2年債については発行日が翌月と月跨ぎとなっていることからT+1への移行ではなく、翌月15日の発行から1日の発行に前倒しされる見込みのようである。

決済日や発行日までの短縮は、電子上の決済となり券面等の受け渡しは必要がなくなっていることで、決済リスクの軽減や、償還資金で新発債を購入する需要が薄れつつある現状を踏まえたものとされるが、日銀の国債買入への対応という側面が大きいとみられる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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