日銀のイールドカーブ・コントロールはここがおかしい

(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

日銀の木内審議委員は23日の山梨県での講演のなかで、イールドカーブ・コントロールのプラスの側面として、「金融市場調節の操作目標を長短金利に変更したことによって、国債買入れペースが変動しうる状態となったことから、この先、国債買入れペースが縮小して、国債買入れの持続性が高められる可能性」を指摘している。しかし、現実には80兆円というメドの数値を残しており、国債買入れペースを縮小させることは容易でないことを日銀は1月の国債の買い入れ調整で身をもって知った格好となった。

日銀は1月25日の国債買入で予想された中期ゾーンをスキップし、その結果、中期ゾーンの国債買入は12月の6回から5回に減り、8200億円減額されることになった。これを受けて市場は動揺を示し、それを沈めるため25日の5年超10年以下の金額を4500億円と400億円増額させた。

しかし、これで市場の動揺は収まらず、日銀の意図も見えないことで、2月2日の10年国債入札日に10年債利回りは0.115%まで上昇した。これは0.1%台を容認しているのかを試したとも言える。そして3日の日銀の買入では超長期は入らず、5年超10年以下も400億円の増額にとどめたことで、ある程度の10年債利回りの上昇を日銀は容認しているとものサインとも受け止められた。これを受けて10年債利回りは0.150%まで上昇した。

これに動揺したのが今度は日銀となった。日銀は通常のオペタイムではなく12時半というイレギュラーな時間帯に新「天下の宝刀」ともいうべき「指し値オペ」をオファーした。これにより日銀は7239億円もの国債を買うこととなり、さらに5年超10年以下の増額分も維持せざるを得なくなり、その結果、買入ペースは縮小どころではなくなってしまった。

木内委員は今回の講演で、イールドカーブ・コントロールのリスクとして下記の指摘をしたが、まさに1月末から2月上旬にかけてのドタバタはこのリスクが顕在化したこととなる。

「イールドカーブ・コントロールのもとで、先行き、国債買入れペースが国債買入れの持続性を高めるのに十分なペースで低下していくかは不確実であり、逆に国債買入れペースの一段の拡大を強いられるリスクがあると考えています。」

日銀の現在の政策である長短金利操作付き量的・質的緩和の問題点は量を完全に引っ込めることなく、金利を政策目標に据えたことである。まさに「二兎を追う者は二兎をも得ず」となり、木内委員も「一般に、量と金利は一体的に決まるものであるため、両方に明示的な目標を設定しつつ安定的な金融調節を行うことは難しいと私は考えています」とコメントしている。

このリスクについては「国債市場に外的なショックが生じる場合に顕現化しやすく、昨年11月以降の米国長期金利上昇に伴うわが国長期金利への押し上げ圧力が長期金利操作への最初の試練になっていると私は考えています」ともコメントしている。

このリスクへの対応としてか、日銀は国債買い入れ日の事前予告を検討していると伝えられたが、そういう問題でもなかろう。そもそも国債の買い入れを減額したいのであれば、それをはっきり伝え、80兆円というメドもなくすべきである。また長期金利の目標についてもかなりレンジがあることを示すべきで、指し値オペの乱用を防ぐことも必要になろう。市場参加者も国債買入の維持の上でも減額は必要と認識しているはずである。それが言えないところに現在の日銀の金融政策上の矛盾がある。

そもそも日銀の金融政策で長期金利がコントロールできるのか、それをして良いのかという問題も存在する。木内委員も講演で下記の指摘をしていたが、その通りだと思う。

「長期金利を一定の水準にコントロールすることは、金利の変動を通じた経済の自動安定化装置機能を損ねてしまうことになり、長期金利をコントロールしない場合と比べて経済の振幅を増幅し、経済を不安定化させてしまう可能性が考えられます」

しかし、木内委員も指摘しているが、長期金利の目標水準の変更は現実には容易でない。「目標水準を頻繁に見直すと、目標に対する信認の低下を招き、市場を不安定化させてしまうリスク」を木内委員は指摘しているが、それよりも異次元緩和を続けないと為替市場や株式市場が動揺してしまうという恐怖心の方が日銀には強いように思える。

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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