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日米首脳会談の目的はひとまず日本への圧力ではなさそう

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

2日の日経新聞によると、政府が10日にワシントンで開く日米首脳会談で提案する経済協力の原案が1日、明らかになったとされる。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が米国のインフラ事業に投資することなどを通じ、米で数十万人の雇用創出につなげる。対米投資などで米成長に貢献できる考えを伝え、トランプ政権との関係強化につなげるそうである。

日米で通商政策や経済協力を話し合う閣僚級協議を新たに立ち上げることも検討し、日本側はメンバーに麻生副総理・財務相、世耕経済産業相、岸田文雄外相らの参加が想定されているそうである。

私は1月26日に「トランプ政権登場による日銀の金融政策への影響」とのタイトルのコラムで次のような指摘をしていた。

「トランプ氏は大統領選後初の会見で貿易赤字の相手国として、中国とメキシコとともに日本の名前を挙げていた。これに対して麻生財務相は13日の閣議後会見で「日本やメキシコよりドイツの方が(米国の赤字は)上ではないか。なぜドイツが出ていないのか」と疑問を呈した。日本政府は2月上旬の日米首脳会談開催を目指し、安倍首相の訪米に麻生副総理兼財務相が同行する方向で調整を進めている。麻生氏の同行は米側からの要請によるものとされる。果たして麻生氏の同行を米国が何故要請したのかはわからない。あの独特のスタイル(服装)をトランプ氏が気に入ったからというわけではないと思うが、貿易赤字の相手国として日本が意識されている可能性は十分ありうる。」

この麻生氏の同行を米側が求めている理由は何か、個人的にもたいへん関心があった。財務大臣を通じて日銀にプレッシャーを掛けるのかのように読めなくもなかったが、実は日本側が何かしらの支援策をすでに準備しており、その関係で麻生副総理・財務相も同行するのではないのかとの観測があった。2日の日経新聞の記事を読む限り、どうやらその観測が正しいものであったようである。

さらに今回の日米首脳会談のあとにトランプ大統領と安倍首相がゴルフをする方向で調整が進められているという。2016年11月、就任前のトランプ氏とニューヨークで会談した際にも、安倍首相は本間ゴルフのべレスS‐05シリーズのなかでも最高級の5Sをプレゼントしたとされる。トランプ氏が安倍首相に用意していたプレゼントもゴルフウェアとゴルフ用品とされる。すでにゴルフする気が満々のようであった。正式な首脳会談のあとにプライベートな機会を用意していることをみると、今回の日米首脳会談は友好を深めることを意図しているかに思える。

それでは何故、ここにきてトランプ氏は中国や日本が市場で何年も通貨安誘導を繰り広げ米国はばかをみているといった発言するなどしていたのか。攻撃して譲歩を求めているとの見方もできようが、そもそもの発言の対象が異なっているのかもしれない。いまだにトランプ大統領の政策は読めない部分が多いが、こと日本に関しては少なくともトップ同士は形式上ではあるかもしれないが、うまくいっているようであり、それは今後のトランプ政権の日本に対する対応に少なからず影響を与えるものであると思われる。ちなみに安倍首相は「為替問題は、財務長官と財務大臣で議論なされるべき。首脳会談でやり合うのは、本来ふさわしいと思っていない」とも発言している。だから麻生大臣が呼ばれたとも言えるのであろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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