日銀の国債買入の減額は継続か
日銀は1月31日の金融政策決定会合では、金融政策について賛成多数で現状維持を決定した。今回も長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)と資産買入れ方針それぞれに、佐藤委員と木内委員が反対した。両委員とも今年7月が任期満了となる。総裁の後任人事の行方が取りざたされているが、個人的には佐藤・木内委員の後任の方が少し心配である(ここにリフレ派を入れるとかなりややっこしくなる)。
それはさておき、注目された「買入れ額については、概ね現状程度の買入れペース(保有残高の増加額年間約80兆円)をめどとしつつ」との文言は削減も修正もされなかった。すでに調節目標が量から金利に移行しており、形骸化した数字で現実からも乖離しつつあるが、簡単には外せないとの認識かとみられる。なぜかこれについての質問も総裁会見では一回程度しか出なかった(何故だろう)。
そしてもうひとつ注目された夕方公表の「当面の長期国債等の買入れの運営について」であったが、こちらもまったく変更はなかった。いや1か所だけあった。それは5年超10 年以下の「1月最終回」分が4500億円となっていたことである。これが2月初回では4100億円と元に戻されている。つまりこれから伺えることは5年超10年以下の400億円の増額は一時的な金利上昇(もしくはその懸念)に対応するものであったといえることである。
1月の日銀の国債買入で最も注意すべきことは、当然ながら1年超5年以下が1回分スキップされていたことである(金額は8200億円分もあった)。それは昨年12月の段階で1年超5年以下の回数表示をそれまでの6回程度から5~7回程度と修正されていたことから、用意周到に準備されていたことも伺える。つまり日銀としては金融政策については手をつけず、さらに画餅となっている80兆円という数字も変更せずに、国債買入のペースを今後の需給を睨んで調節してきた格好となる。
当然ながら金融政策は企画局が立案し決定会合で政策委員が決定する形式となっているが、日々の国債買入については金融市場局の仕事となる。金融政策の範疇を超えないところでの必要な調整を行うことが求められ、その結果が1月の中期ゾーンの買入スキップということになったのではなかろうか。
ところがここにあらたな不透明要因が現れてきた。米国のトランプ大統領である。トランプ大統領は31日にホワイトハウスでの製薬会社幹部との会合で、中国や日本が市場で何年も通貨安誘導を繰り広げ米国はばかをみていると発言。資金供給と通貨安誘導で有利な立場にあるとも主張し、日銀の量的緩和政策などを念頭に置いて批判した可能性が出てきた。
過去の歴史を見ても日本は米国の圧力を無視できない。その意味では、実勢にあった買入の量の調節はやりやすくなったとも言えるのかもしれない。次回会合でトランプ氏の意向を反映し、80兆円という数字を取り除き、国債買入については今後減額する用意があるといった意向を示すことも可能になるためである。ただし、トランプ氏の問題はそんなところにあるものではないことも確かではある。