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市場参加者による国債への懸念

久保田博幸金融アナリスト
(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

6月24日に開催された国債市場特別参加者会合(第66回)議事要旨が公表された。このなかの「最近の国債市場の状況と今後の見通し」に関する参加者の意見からいくつかピックアップしてみたい。ちなみに国債市場特別参加者とは、少し前に話題となった日本版のプライマリー・ディーラーである。

たとえば、このまま円高が進めば日銀が追加緩和するとの見方が強まり、更なるイールドカーブのフラット化の圧力が掛かるとの見方があるが、それにも限度があり、ゼロ%が1つの目安ではないかとの指摘があった。28日に20年債の利回りは0.04%にまで低下しゼロに接近していたが、超長期債の利回りのマイナス化までは現状は想定しづらいというところか。

複数の出席者が指摘していたのが、国債市場の流動性の低下である。これにより国債による価格発見メカニズム自体が失われていくことも懸念され、さらに流動性の低下はまとまった額の売りが出ると、一時的に金利が急上昇する可能性は絶えずあるとの指摘があった。更に下記のような指摘もあった。

「仮に、日本銀行が2%の物価目標を引き下げるようなことになれば、金融政策の出口につながり、大きな金利上昇となるリスクを孕んでいるのではないか。」

ただ、物価目標がいつまでたっても達成できないかといって、日銀による大量の国債買入もいつまでも継続できるものでもない。日銀の国債買入での未達が連続して発生するような事態が起きる懸念があり、いずれ何らかのかたちでテーパリングを行う必要が出てくると思われる。しかし、その際には物価目標を柔軟なものにするといった対応が取られる可能性がある。

そして、複数の参加者からレポ取引に関わる課税の面での指摘があった。現在、国内金融機関と海外ヘッジファンドとのレポ取引は非課税措置の適用対象外であり、このことは海外ヘッジファンドが日本の金融機関とレポ取引を行う上での制約になっている。海外ヘッジファンドはマイナス金利の下で日本国債に非常に関心を高め、こうした投資家を日本のマーケットに呼び込み日本国債の取引量を回復させる必要があるのではとの指摘である。

日本の国債市場を大きく動かしている市場参加者は日銀トレードを行っている日銀と業者を除くと、いわゆる投資家は海外投資家が中心となっている。マイナス金利の日本国債を購入できる海外の投資家や、イールド・カーブの裁定取引をしている海外ヘッジファンドなどであり、さらに海外投資家を呼び込み流動性を少しでも向上させる必要性はあるかもしれない。

そして、日本の信用力を保つことに向けたしっかりとしたコミットメントが必要との指摘もあったが、やはりここが一番重要なポイントかではなかろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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