白井日銀審議委員の後任候補は異次元緩和賛同派か
政府は3月31日に任期を迎える白井さゆり審議委員の後任として、サクライ・アソシエイト国際金融研究センター代表の桜井真氏を起用する人事案を衆参両院の議院運営委員会理事会に提出した。
日銀法23条2項に「審議委員は、経済又は金融に関して高い識見を有する者その他の学識経験のある者のうちから、両議院の同意を得て、内閣が任命する」とあるように、6名の審議委員は旧日銀法にあったようにそれぞれの業界団体を代表するようなメンバーとは特に決められていない。しかし、旧日銀法の政策委員の選定方法がある程度世襲されており、産業界出身者、銀行出身者、学者、市場関係者、そして日銀プロパーなどで、ある程度のバランスが取られている。そして、例えば銀行出身者が任期満了となる際には、次期審議委員は同じ銀行出身者から選ばれることが多い。
白井さゆり委員は学者枠と言うよりもエコノミスト枠であったとみられる。後任候補の桜井真氏は日本輸出入銀行や経済企画庁研究所客員研究員などを経てサクライ・アソシエイト国際金融研究センター代表となっている。浜田宏一氏との共同論文があり、自民党の山本幸三氏とも親交があるようで、いわゆるリフレ派と呼ばれる人たちに近いようである。もしかすると山本氏などの推薦を受けて菅官房長官らによって選出されたのかもしれない。
白井委員は1月のマイナス金利に反対したことで、白井委員の後任にはアベノミクスや異次元緩和に理解を示す人物が選出されるのではないかと思われたが、現実にそうなりそうである。マイナス金利政策や異次元緩和にどの程度理解を示しているのかはあまりデータがなく不透明ではあるものの、岩田副総裁や原田泰審議委員と同じような考え方を持つ人物とみられることで、執行部の意見には賛同すると予想され、反対票がひとつ減ることになりそうである。
6月29日には石田浩二審議委員が任期を迎える。こちらも再任とはならず銀行出身の後任が選出されるのではないかと予想されていた。その候補の一人として新生銀行執行役員の政井貴子氏の名前が挙がっていたが、これにはやや意外感があった。エコノミストと女性枠として、白井さゆり審議委員の後任というのであればわかるが、石田審議委員の後任とは考えづらかったのである。なぜならば石田審議委員のポジションは銀行枠というよりもメガバンク枠とも言えるものであったためである。
石田審議委員は三井住友フィナンシャルグループの出身であり、その前任の野田忠男氏はみずほフィナンシャルグループの出身、その前任の中原真審議委員は旧東京銀行、つまり現在の三菱UFJフィナンシャル・グループ出身であった。その前任が武富将氏(元日本興業銀行出身、みずほフィナンシャルグループ)であった。日銀は銀行の銀行と呼ばれるが、その民間銀行で大きな影響力を持つのはメガバンクであり、そこの出身者が石田審議委員の後任として選出されるのではないかと思われたためである。
ただし、石田委員は昨年12月18日の補完措置の決定、1月29日のマイナス金利政策において反対票を投じている。後任が銀行出身者から選出されるとなれば、マイナス金利や異次元緩和に異を唱える人物が選出される可能性が高くなる。銀行枠でマイナス金利政策に理解を示す人物を選出することはかなり難しいのではなかろうか。そうなるとメガバンクにこだわらずの人選があるのかもしれない。しかも白井さゆり委員が退任すると日銀の政策委員に女性がゼロとなってしまうため、そこでかつてのECBのような批判が出る懸念もあり、女性候補を探る必要があったのかもしれない。