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年間の国債売買高が減少

久保田博幸金融アナリスト

1月20日に日本証券業協会(JSDA)は12月の公社債投資家別売買高を公表した。発表される公社債投資家別売買状況のデータは、全体の数字と短期債の数字となっているため、短期債を除く債券のデータについて全体から短期債を引いた。ここには国債入札で購入した分や日銀の国債買入分は入っていない。それが下記となる。

12月の公社債投資家別差し引き売買高

注意、マイナスが買い越し、単位・億円

()内は国債の投資家別売買高の超長期・長期・中期別

都市銀行 1485(-70、1822、-352)

地方銀行 3117(-403、3993、745)

信託銀行-1234(-979、-600、869)

農林系金融機関-2422(-2273、526、-139)

第二地銀協加盟行-545(-199、-420、57)

信用金庫-904(-56、295、85)

その他金融機関-1429(-584、152、-643)

生保・損保-2707(-2316、912、-633)

投資信託-1890(-97、268、-995)

官公庁共済組合-47(-129、111、0)

事業法人-800(39、-236、-287)

その他法人-717(73、-361、-59)

外国人-12155(1401、-3625、-9895)

個人 476(-7、58、9)

その他 16598(4319、3216、12242)

債券ディーラー-206(203、-1194、815)

都銀は4か月連続での売り越しとなったが、1485億円の売り越しと11月の8377億円の売り越しからは売越額は大きく減少した。地銀が長期債主体に3117億円の売り越し、信託銀行や農林系金融機関などは超長期債主体の買い越しとなった。そして12月も「その他」が1兆6598億円の売り越しとなっていた。

これらに対して外国人は、12月も1兆2155億円の買い越しとなった。11月は1兆8004億円の買い越しとなっていた。外国人は18か月連続の買い越しとなる。外国人は超長期債を1401億円売り越していたが、長期債は3625億円の買い越し、そして中期債は9895億円の買い越しとなった。

国債投資家別売買高(一覧)をもとに国債の合計(超長期と長期と中期のみ)の売りと買いを合算してみたところ、2015年11月の国債売買高は2004年4月以降の統計で2005年12月以来の低い数字となっていた。ただし、12月は11月からやや回復していた。

今回は1月から12月までの年間の国債売買高の合計(超長期債・長期債・中期債)を手元で算出したところ下記のような結果となった。日銀の量的・質的緩和を導入した2013年以降は売買高は少しずつ落ち込み、2015年はこの10年のなかで最低となった。大きく落ち込んでいるわけではないとは言え、国債の残存額そのものは年々膨らんでいることを考慮すると確実に流動性は低下しつつあると言えるのではなかろうか。

1月29日の日銀のマイナス金利の導入により、国債利回りも大きく低下し残存7年半あたりまでの国債利回りがマイナスとなった。国内機関投資家はマイナス金利での運用は難しいことで、今後さらに債券市場の流動性が後退する懸念が強まるものと思われる。

年 国債売買高(億円)

2005 18949931

2006 21009723

2007 21834443

2008 21327591

2009 19345330

2010 22105342

2011 23339194

2012 23806957

2013 18377996

2014 20851281

2015 17619226

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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