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パリ同時テロで何が変わるのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

フランスのパリで11月13日夜、武装したグループによる同時テロ事件が発生した。先進国の大都市でのテロ事件であったことで、これは世界に衝撃を与えた。かなり念密に練られた計画であったようで、13日の金曜日を狙ったというより、11月15、16日にトルコのアンタルヤで開催されたG20のタイミングを狙ったと思われる。実際にトルコでの計画もあったようである。

しかし、G20のタイミングを狙ったことで、むしろシリアのアサド政権を巡って対立していた米国とロシアの関係が、これをきっかけに変化する兆しもある。G20では非公式に米国のオバマ大統領とロシアのプーチン大統領が顔を付き合わせて話し合う姿が強く印象に残った。これはひとつのパフォーマンスであったかもしれないが、アサド政権への対応はさておき、対ISという姿勢でG20が結束を固めたとみるべきかと思われる。

今回のパリのテロはISがかなり焦りを感じているためとの見方もあり、今後はフランスや米国、ロシアを中心としたISへの攻撃が焦点となる可能性がある。今後はフランスがイニシアチブを取ってくる可能性はあるが、やはり米ロの動向を注意すべきかと思われる。

今回のテロにより、世界経済そのものへの影響は限られるとみられ、実際に金融市場もそれほど大きな動揺は見せなかった。2001年9月11日の米国における同時多発テロの際には、米国の金融システムの中心地が大きな被害を受けたことで金融市場にも衝撃が走ったが、今回は、今回は金融システムへの影響はほとんどなく、市場への影響は限られた。

ひとつ注意すべきと思われるのが、原油価格の動向か。中東の地政学的リスクが意識され、今後も荒い値動きが続く可能性がある。ただし、中国を中心とした新興国の景気減速により、原油の需要後退はこれからも続くとみられ、原油先物は波乱含みながら下値を模索する展開が予想される。

今後は再び欧米の中央銀行の金融政策の行方が焦点になると思われるが、今回のテロを受けて、たとえばFRBが12月の利上げを躊躇することは考えづらい。また、ECBにとっては、テロによってもしリスク回避の動きが強まれば、それを口実にして12月3日の理事会での追加緩和という手段もあったかもしれない。しかし、現実には12月のECBの追加緩和はドイツなどの反対もあり、かなり厳しいのではないかとみている。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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