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3~6月はほぼ日銀のみが国債買い越し

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

9月17日に日銀は2015年4~6月期の資金循環統計(速報)を発表した。これによると6月末の家計の金融資産は1717兆645億円と3月末の1700億1116億円(確報)を上回り、過去最高を更新した。

資金循環統計を基に2015年6月末時点の国債保有者別の残高と全体に占める割合を算出してみた。ただし、これは国庫短期証券を含んだものではなく、国債・財融債のみの数値を個別に自分で集計し直したものである。また、3月末との比較においては3月末の確報値を用いている。

6月末の国債(国債・財融債のみ、国庫短期証券を除く)の残高は、8853兆1175億円と前回の3月末から2兆432億円増加した。国庫短期証券を加えると6月末の国債の残高は約1037兆円となる。日銀の資金循環統計の数値は額面ベースではなく「時価ベース」となっている点に注意いただきたい(財務省の国債残高などは額面ベースが多い)。

民間預金取扱機関 259兆9031億円(3月末比-11兆6641億円)、29.4%(3月末30.7%)

民間の保険・年金 232兆0262億円(同-1兆2285億円)、26.2%(同26.4%)

日本銀行 245兆3304億円(+20兆3821億円)、27.7%(同25.5%)

公的年金 52兆7834億円(-1兆3600億円)、6.0%(同6.1%)

海外 41兆5808億円(-1兆7926億円)、4.7%(同4.9%)

投信など金融仲介機関 25兆5238億円(-7525億円)、2.9%(同3.0%)

家計 15兆4078億円(-1兆4777億円)、1.7%(同1.9%)

財政融資資金 74億円(-492億円)、0.0%(同0.0%)

その他 12兆7546億円(-143億円)、1.4%(同1.4%)

3月末に比べて、残高が増加していたのは上記の区分によると日銀だけである。3月末比で20兆円を超える増加となっている。銀行などが売却した分をすべて日銀が吸い上げ、さらに全体の増加分も日銀がカバーした構図になっている。

もう少し細かい区分でみてみると、民間預金取扱機関のうち国内銀行(都銀・地銀)が5兆792億円の減少、中小企業金融機関等が6兆3881億円の減少となっていた。今回もゆうちょ銀行の減少分が大きかったのではないかとみられる。

公的年金は1兆3600億円の減少となった、GPIFの運用見直しによる売却はある程度一巡したとみられるものの、まだ国債の売却を進めているようである。

海外投資家は1兆7926億円の減少となった。海外投資家の長期国債のシェアは4.7%。国庫短期証券を含んだ数字で見ると全体の9.2%のシェアとなり3月末の9.4%から減少した。日銀は国庫短期証券を含んだシェアは28.5%となっており、国債全体の三分の一近くを保有していることになる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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