日銀の追加緩和シナリオはあり得るのか
自民党の山本幸三衆院議員は、30日に控える日銀の金融政策決定会合に関して、「何もしないという話はちょっとあり得ない」と述べたと伝えられ、これが30日の決定会合での追加緩和観測のひとつの要因となっている。
山本幸三衆院議員は安倍晋三首相の経済政策ブレーンとされる。消費再増税の延期を提言し、安倍首相はそれを決断している。昨年10月8日のロイターとのインタビューでは、日銀が掲げる「2%の物価安定目標」の達成を確実にするために、追加緩和を行った方がよいと述べた。放置すれば目標達成時期は2016年度中に後ずれしかねないとも指摘していた。
昨年10月31日に日銀が決定した量的・質的緩和政策は市場にとってサプライズとなったが、それを事前に山本議員は求める発言をしていたのである。さらにこの際には、ある大手証券が追加緩和を予想をしており、そこが今回も追加緩和がありうるとの見方となっていることから、4月30日の追加緩和観測が出ているようである。
追加緩和の可能性はさておき、もしこのタイミングで追加緩和を決定するとなれば、何がその背景にあるのか。前回10月の追加緩和のタイミングはFRBのテーパリング終了を意識していた可能性があったが、山本議員は、追加緩和したからといってすぐに急速に円安が進むことは今回の場合は心配ない、と指摘している。
山本議員は現在、首相とともに訪米している。ワシントンで行われる日米国会議員会議に参加するほか、安倍首相が29日に上下両院合同会議で行う演説も傍聴。これとは別にイエレンFRB議長とも面会する予定だそうである(ブルームバーグ)。
米国の動向を意識して今回の緩和効果については、円安を強調しなかったとみられるが、山本議員とイエレン議長の会見はたしかに気になるところではある。
追加緩和の理由はさておき、確かに昨年10月のサプライズを予見した人たちによる今回の追加緩和観測コメントは無視はできないものの、山本議員の発言は日銀の動向を察知してのものかどうかはむろんわからない。異次元緩和第二弾は密かに1か月前あたりから黒田総裁を中心に少人数で準備を進めていたとの観測もあり、その動きを知っていた可能性もゼロではないが、最近の日銀の守秘義務は徹底しているようにも思われる。
昨年10月31日の決定会合の追加緩和の決定にあたり、政府関係者が異例の中断を申し入れていたことを考えると、この際に政府側には追加緩和の可能性は打診していなかった可能性がある。このときは政府の意向はさておき、消費増税の決断を促す意味での追加緩和との見方もできよう。たまたまリフレ派の一部の追加緩和期待と黒田総裁の思惑の方向性が一致していたという見方もできるのではなかろうか。個人的には4月30日の決定会合での追加緩和の可能性は極めて薄いとみているが、それでも市場の注目度が高くなるとみられ、注意しておく必要はありそうである。