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来週のFOMCと日銀決定会合の予想

久保田博幸金融アナリスト

4月28日、29日にFOMCが開かれる。その翌日、30日には日銀の金融政策決定会合も開かれる。それぞれ今回は現状維持と予想する。

前回3月のFOMCでは金融政策は現状維持となり、声明文では忍耐強くなれる(can be patient)との文言は削除された。その上で、4月28~29日のFOMCでの利上げの可能性は低いとしていた。

このときの議事要旨によると、何人か(2~3人か)の会合参加者は、経済データや見通しからみて、6月の会合で正常化を開始することが妥当であろうと指摘した。他の参加者は原油価格の下落による影響やドル高による物価低迷が長引く状況を考慮すれば、今年の後半になるまで金利の引き上げは待つべきとの意見のようである。さらに2人の委員は利上げが適切となる経済情勢は2016年まで訪れない公算が大きいとの認識であった。

4月20日にニューヨーク連銀のダドリー総裁は講演で「経済データが年内の利上げ決定を支持すると期待している」と述べていた。比較的利上げには慎重派のダドリー総裁だが、現在のイエレン総裁などの主流派は今年後半の利上げを意識しているとみられ、ダドリー総裁もそちらに入っているようである。

ここにきての米国の経済指標は4月3日に発表された3月の雇用統計を含めて予想を下回るものが多い。この点からは経済データが年内の利上げ決定を可能にできるのかを見極めるものとなり、今回のFOMCでは金融政策は現状維持となり、利上げ時期の見方については大きな変更はないものの、やや慎重になることも予想される。

10月30日には日銀の金融政策決定会合が開かれる。4月23日に参院の財政金融委員会に出席した日銀の黒田総裁と岩田副総裁の発言内容からみると、これまでのスタンスには大きな変化がないように思われる。もちろん昨年10月と同様のサプライズ緩和もないとは言えないが、あのタイミングではまさに「今でしょう」という理由が、いくつか存在していたのに対し、現時点ではそのような要因は見当たらない。

昨年のタイミングは、原油下落で物価の前年比が縮小していたことや、FRBのテーパリング終了にぶつけられることによる円安誘導、政府による消費増税の決断などが考慮されたのではないかと推測される。しかし、今回はFOMCに動きはなく、物価目標はさておき、このタイミングで日銀が動くことは考えづらい。

注目はむしろ展望レポートになるのではなかろうか。1月の中間レビューでは2015年度の物価見通しが前年比プラス1.0%と昨年10月のプラス1.7%との見通しから大きく下方修正されていた。それが30日に発表の展望レポートでは、さらに下方修正されて、ゼロ%台の後半になるとの見通しである。ただし、2016年度については10月の予測がプラス2.1%となっており、今回も2.0%台を維持させることで、2016年の序盤までに物価目標は達成できるという数字を出してくることが予想される。このため、足元の物価がゼロ%近辺でも、そのための追加緩和は行わず、現状維持とする可能性が高い。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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