2015年のリスク要因
2015年の金融経済の動向を予測する上でのリスク要因となりそうなものをピックアップしてみたい。ただし、リスクとはブラックスワンのごとく予想しえなかったものがきっかけとなることの方が多い。その意味ではこれから列挙するものは、むしろリスク要因とはなりえないものと考えることもできるかもしれない。
欧州の危機が再燃するかどうかについては、ギリシャの動向が最大の注目要因となろう。25日の総選挙では予想されたとおり、野党であった急進左派連合がサマラス首相率いる新民主主義党を破り勝利した。これによりギリシャのユーロ離脱の懸念も出ていたが、急進左派連合はギリシャのユーロ離脱には慎重な姿勢を見せていることに加え、ユーロ圏の財相会議ではギリシャがユーロ圏に止まる事を前提に話し合いを行う方針を確認している。ギリシャの新財務相はギリシャはデフォルトすべきだと主張していたように、支援策をまとめることについては難航も予想される。しかし、ギリシャにとってもユーロ離脱は容易なものではないことも十分理解しているはずであり、ギリシャのユーロ離脱はリスク要因ではあるが、その可能性はきわめて低いのではなかろうか。
格付会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は26日にロシアのソブリン格付けを「BBBマイナス」から、投機的等級となる「BBプラス」に引き下げた。経済成長見通しが悪化したことが理由としている。原油価格の下落による産油国経済への影響も大きく、さらにウクライナ問題も影響していよう。ウクライナ東部で戦闘が激しくなっていることで、再びウクライナ情勢がリスク要因として浮上する懸念もあるが、市場への影響度を見る限り、あまり材料視していないことからも、よほどの事態とならない限りは、ウクライナ情勢もあくまでリスク要因のひとつに過ぎない。
原油価格の下落は世界経済にとり、果たしてリスク要因と言えるのかはさておき、日銀などにとっての注目材料であることは確かである。こちらはサウジアラビアのアブドラ国王が死去したことで、これまでの戦略が継続されるのかどうか注目されている。いまのところ、これまでの戦略が継続されるとの見方が強い。シェールガスに対して価格低下でシェア低下を防ぐ必要があるため、低価格戦略を変更することは難しい。問題はどの程度の原油価格の下落まで容認し、それをどの程度の期間続けるのかであるが、50ドル以下の状態をかなりの期間維持するのではとの見方も強い。
各国中央銀行の動向はリスク要因となるのか。1月22日にECBはドラギ総裁念願の量的緩和策導入を決定し、市場はこれを好感した。米国の量的緩和が終了しても、その分を日銀やECBがカバーし、世界的な過剰流動性相場は続いている。FRBは今年6月あたりを目処にゼロ金利解除を実行してくると予想される。ダボスではサマーズ氏などがFRBの利上げについて懐疑的な発言をしていたようだが、米国経済については不安は少なく、物価の上昇圧力は低下しているものの、利上げに耐えられないような経済環境ではない。また、日銀やECBが過剰流動性の部分でカバーしていることで、市場への影響もそれほど大きくはないとみられ、すでにかなり織り込まれている。この環境下でFRBの利上げがリスク要因となることも考えづらい。
日本のリスク要因としては、いろいろと矛盾が生じつつある日銀の金融政策がある。このまま物価が日銀の掲げた目標に遠ざかると、市場から追加緩和圧力が強まることも予想される。しかし、賃金がある程度上昇してくるとなれば、物価そのものは上がらずともデフレの状態からは抜けつつあるという説明がなされるかもしれない。日銀は軸足を2%という物価目標に固定せず、もう少し柔軟な姿勢に変わる必要がある。国債買入についても無理をしない程度に柔軟なものに変えれば、将来の価格変動リスクを押さえることができるかもしれない。もしそうでなければ、膠着し日銀に依存しすぎた日本の債券市場がリスク要因となる可能性がある。