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デイトレードは順張りか逆張りか

久保田博幸金融アナリスト

デイトレードでは順張りが良いのか、逆張りが良いのか。最近のデイトレーダーは逆張り派が多いとの話を聞いて再び疑問が沸いてきた。

市場の流動性を確保するためには、デイトレーダーを含めた、個人からヘッジファンドなどのプロなどの投機家の存在は必要不可欠だと思っている。ときとして相場の攪乱要因ともなり、HFTと呼ばれる超高速取引も流動性確保のためには必要悪だと思っている。

私がデイトレードに携わっていたのは1986年から2000年あたりの債券市場においてであった。プロのデイトレーダーと自称したが、トレードの利益で生活していたわけではなく、会社の資金を利用して債券市場で日計り商い(いわゆるデイトレード)を中心に売買して、会社の債券売買損益に影響を与えていたサラリーマンであった。年間ベースでは当初の1986年10月から1987年3月末の1986年度で損失を出したが、1987年度からはすべて売買益を計上していた。ただし、年間何十億もの利益を出していたわけではなく、そこそこ稼ぐことができたディーラーであり、だからこそ14年間も続けられたのだと思う。

デイトレードから足を洗って10年以上も経過し、その間、個人による株やFXのデイトレードが盛況になるのも見てきた。コンピュータの進歩とともに、私の時代ではディーリングルームにいる市場関係者しか知り得なかったような価格を含めた情報も個人は得ることができる時代となった。HFTなど新手の取引も生まれ、たしか時代は大きく変わった。

しかし、相場である限りその本質には変化はないはずである。私の時代の相場の教科書といえば、江戸時代から伝わる酒田五法であったぐらいである。現在の金融先物の仕組みはすでに江戸時代の堂島にあり、やはりデイトレーダーも存在していたのである。

現在の相場でもその手法はそれほど大きく変化しているとは思えない。そのなかで順張りより逆張りが多いとの指摘には、やや違和感を覚える。これは自分の経験から、よほどの天才型のディーラーでない限り、逆張り型はいずれ大きな損失を発生し自滅する可能性が高いとの結論に達していたためである。順張り型は確率は低いものの大きな流れが出たときに乗って利益を出し、その利益をなるべく確保すれば、とにかく大きな損失が発生する懸念は少なくなる。

ただし、何のトレードかによって多少の違いもあるかもしれない。株なのか為替なのか債券なのか。いまの債券相場で順張りで稼ごうとしてもかなり無理はある。反対に現在の原油先物などの動きでは、逆張り派は目も当てられない状況ともなることになる。

逆張り派が多くなったということは、それだけ天才型のディーラー、つまり節目などでの勢いの変化をうまく利用できるディーラーが増えてきたということなのか。それとも私の時代にも多くいたが、初心者が陥りやすい逆張りを行っているディーラーが多いというのであろうか。

私は逆張りやナンピンはディーラー時代には御法度としていた。それが生き残る術だとも思っていた。もしかすると、もうそんな時代ではないのだよ、と言われるかもしれない。それでは、いまの逆張り手法とはどんなもので、それによりマーケットサバイバルは可能なのか、このあたりたいへん興味がある。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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