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10月は都銀や信託銀行が債券を大幅売り越し

久保田博幸金融アナリスト

11月20日に日本証券業協会は10月の公社債投資家別売買状況を発表した。これは日本証券業協会の協会員、つまり証券会社から、当月中に取り扱った公社債の一般売買分(現先(条件付売買)を除き、国債の発行日前取引を含む)の状況についての報告を基に、集計したものである。発表される公社債投資家別売買状況のデータは、全体の数字と短期債の数字となっている。このため、短期債を除く債券のデータについては、全体から短期債を引いたものを使うことになる。

10月に都銀は3兆8712億円の売り越しとなった。4か月連続での売り越しである。同時に発表された国債の投資家別売買状況を確認すると、長期債を3兆9983億円売り越しており、長期債主体の売り越しであった。都銀は7月、8月と中期ゾーンから長期・超長期ゾーンに乗り換えた格好となっていたが、今回は長期債の残高を落としてきた。9月の都銀による中期国債の売り越しの4兆2258億円は2004年4月からの集計データのなかでは過去最大規模となっていたが、10月はその中期債を3451億円買い越していた。

売り越しで目立っていたのは都銀に加え、信託銀行で1兆341億円の売り越し。超長期債を5404億円、長期債を4741億円売り越していた。GPIFの運用比率の変更を睨んでの動きと思われる。

買い越しで最も大きかったのは引き続き外国人となり、1兆8742億円の買い越し。超長期債を3924億円、長期債を5441億円、中期債を9171億円と今回も万遍なく買い越している。

次に買い越しが大きいのは、生損保の7540億円。こちらは超長期国債を4855億円買い越し、中期債を1377億円買い越しとなっており、長いところの主体に買い越していた。続いて投資信託の5008億円の買い越し。こちらは中期債を2803億円の買い越しとなっていた。

10月の債券相場はほぼ右肩上がりの上昇相場(利回りは低下)となった。しかし、値幅はさほど大きくなく、債券先物は146円近辺から146円半ばあたりまで上昇した程度。10年債利回りは0.5%台から0.4%台の前半に低下した。問題はこのあとになる。

10月31日に日銀量的・質的緩和の第二弾を決定し、ドル円はそこからほぼ一本調子で上昇(円安ドル高)となり、110円台から118円台に。安倍首相は11月18日に消費増税の18か月の延期と21日の衆院解散を表明した。ここにきて債券は超長期債主体にかなり値動きの荒い展開となり、国債需給のひっ迫により2年債利回りは19日に初めてゼロ%をつけた。QQE2により国債の買入れはさらに追加された上に、財政健全化に向けた大きな柱である消費増税が延期されたことで、財政ファイナンスへの懸念も強まることも予想される。11月以降の債券市場で投資家はどのような動きを見せるのであろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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