8月は海外投資家が積極的に日本国債を購入
9月22日に日本証券業協会は8月の公社債投資家別売買状況を発表した。これは日本証券業協会の協会員、つまり証券会社から、当月中に取り扱った公社債の一般売買分(現先(条件付売買)を除き、国債の発行日前取引を含む)の状況についての報告を基に、集計したものである。
発表される公社債投資家別売買状況のデータは、全体の数字と短期債の数字となっている。このため、短期債を除く債券のデータについては、全体から短期債を引いたものを使うことになる。
8月の都銀は4671億円の売り越しとなった。7月の4527億円の売り越しに続いて、2か月連続での売り越しである。同時に発表された国債の投資家別売買状況を確認すると、超長期債を2493億円買い越し、長期債を7148億円買い越しに対し、中期債を1兆4506億円売り越していた。中期ゾーンから中長期債に乗り換えた格好で、残高を落としながらデュレーションをやや長めにしてきた。
8月の債券相場は途中、利食い売りを挟みながら基調は上昇トレンドを維持していた。ECBの追加緩和期待によるユーロ圏の国債利回りの低下が意識され、日本国債も買い進まれ10年債利回りは0.5%を割り込んだ。
信託銀行は7783億円の売り越し。信託銀行が売り越しとなるのは今年5月の売り越し以来。ただしその前は2012年10月以来となり、信託銀行としての売り越しは極めて珍しい。超長期債はやや買い越しとなっていたが、長期債と中期債は売り越し。GPIFのアロケーション変更に伴う動きの可能性が高そうである。むろん、GPIFだけの残高調整だけでなく、それを意識しての共済年金等も同様に残高を落としてきた可能性がある。
農林系金融機関は4354億円の買い越し。超長期債主体の買い越しとなっていた。信用金庫は3873億円の買い越し。こちらは超長期や中期主体の買い越し。生損保は3372億円の買い越し。超長期債と中期債を買い越して、長期債を売り越していた。
買い越しで最も金額が大きかったのが外国人であり、2兆381億円の買い越しに。ECBの追加緩和観測による欧州の国債の利回り低下などもあり、日本国債にも買いを入れてきたものと思われる。超長期債を3599億円、長期債を8971億円、中期債を7797億円、それぞれ買い越しとなっていた。
債券相場は9月に入ってからは、それまでの上昇トレンドから調整局面に移行した。9月4日のECB理事会での追加緩和により、噂で買って事実で売る動きが出たことで、欧米の国債が売られたこともある。それとともにFRBの利上げ観測もあってのドル買いの動きに、日銀の黒田総裁の発言などをきっかけとした円売りが加わって、ドル円が9月始めの104円台から一気に109円台まで駆け上がったこと。この円安とともに米株がダウで過去最高値を更新するなどしたことによる、東京株式市場の上昇もあり、9月の10年債利回りは0.5%台の後半まで上昇した。この債券相場の下落過程では、投資家の利益確定売りなども入ったとみられ、来月発表される9月の公社債投資家別売買動向も確認しておきたい。