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公的年金やゆうちょ銀行が国債残高を減少か

久保田博幸金融アナリスト

7月18日に日銀は2014年4~6月期の資金循環統計を発表した。この資金循環統計を基に、2014年6月末時点の国債保有者別の残高と全体に占める割合を算出してみた。ただし、これは国庫短期証券を含んだものではなく、国債・財融債のみの数値を個別に自分で集計し直したものである。一般的に国債の保有者の割合としては、こちらの数値が使われることが多い。

6月末の国債(国債・財融債のみ、国庫短期証券を除く)の残高は、852兆4316億円(3月末840兆7572億円)と前回の3月末から11兆6744億円増加した(速報ベース)。国庫短期証券を加えると国債の残高は約1013兆円と1000兆円を突破した。

参考までに日銀の資金循環統計の数値は額面ベースではなく「時価ベース」となっている点に注意いただきたい(財務省の国債残高などは額面ベースが多い)。以下、投資家別に残高の多いものから並べてみた

銀行など民間預金取扱機関 285兆8224億円(3月末287兆5071億円)、33.5%(同34.2%)

民間の保険・年金 228兆2342億円(同225兆3200億円)、26.8%(同26.8%)

日本銀行 169兆8223億円(同156兆8771億円)、19.9%(同18.7%)

公的年金 65兆1899億円(同66兆9164億円)、7.6%(同8.0%)

海外 35兆1977億円(同34兆4478億円)、4.1%(同4.1%)

投信など金融仲介機関 31兆6164億円(同30兆2533億円)、3.7%(同3.6%)

家計 20兆3879億円(同21兆0328億円)、2.4%(同2.5%)

財政融資資金 3978億円(同6043億円)、0.0%(同0.1%)

その他 15兆7630億円(同17兆7984億円)、1.8%(同2.1%)

3月末に比べて、残高が最も増加していたのが例によって日銀である。3月末比で12兆9452億円の増加となっている。つまり3月末から6月末にかけての全体の増加分11兆6744億円以上を日銀がカバーしていた計算となる。次に増加額が大きかったのは民間の保険・年金で2兆9142億円増、続いて投信など金融仲介機関の1兆3631億円増。

反対に3月末から6月末にかけて残高を大きく落としていたのは公的年金で、1兆7265億円の減少となっていた。GPIFの運用見直し作業も進んでいるようであるが、国債の残高はすでに落とてきている。

次に残高を大きく減少させていたのが銀行など民間預金取扱機関で、3月末から1兆6847億円の減少に。内容をみてみると都銀を含む国内銀行が4兆4120億円増加させていたが、中小企業金融機関等が今回も4兆9940億円も減少させていた。ちなみに中小企業金融機関等は12月末から3月末にかけても3兆8355億円もの減少となっていた。現在、ゆうちょ銀行は個別にカウントされていないが、その多くはゆうちょ銀行の可能性が高い。また、農林水産金融機関も1兆1290億円減少させていた。上記の集計上はその他に入れてしまっているが、非金融法人企業も2兆2404億円も国債残高を減少させていた。。

海外投資家の長期国債のシェアは4.1%。国庫短期証券を含んだ数字で見ると全体の8.5%のシェアとなり12月末の8.4%からやや増加した。個人の長期国債のシェアは2.4%に低下した。その家計の金融資産は、1644兆7604億円と過去最高を記録した。

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日銀、資金循環統計を元に作成

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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