日本の債券先物も引け値で過去最高値を更新中

 8月27日にドイツの10年債利回りは一時0.9%を割り込み過去最低を更新した。フランス、オーストリア、ベルギー、オランダ、フィンランド、アイルランド、イタリア、スペイン、ポルトガルの10年債利回りも過去最低を更新した。

 米国株式市場でも26日にダウ平均はザラ場で一時最高値を更新し、S&P500は引けで初めて2000の大台に乗せた。

 そして、日本の債券市場も静かに記録を更新しつつある。8月28日の債券先物の引け値は146円29銭と「引け値」としての過去最高値を更新したのである。

 過去最高値にはザラ場、つまり取引時間中につけた高値とともに、引け値(終値)での過去最高値がある。ザラ場の語源は「雑乱場」とされ、寄り付きと引けの間の取引時間を示している。昔は人と人が売買しており、その時間はまさに伝票や罵声が飛び交う場であったのである(覚えている方は昔の株式の立会場を連想してほしい)。

 それはさておき、それでは債券先物のザラ場でつけた過去最高値はいつのことで、いくらであったのか。債券先物、正確には長期国債先物中心限月における過去最高値は、2013年4月4日の夕方、イブニング・セッションでつけた146円44銭である(約定日は4月5日となる)。2013年4月4日に何があったかといえば、日銀が量的・質的緩和を決定した日である。この4月4日の先物の高値は146円05銭、引け値は146円04銭。その後のイブニングで146円44銭まで上昇した。

 翌日の4月5日の債券先物は146円38銭で寄り付いて146円41銭まで上昇した。この間、10年債利回りは0.315%まで急低下したが、先物はイブニングでつけた高値の146円44銭は抜いてこなかった。その後、5年債が0.135%から0.2%台に利回りが急上昇したことをきっかけに、過去最低利回りを更新していた10年債にも売りが入り、0.315%から0.620%に利回りが急騰。これにより債券先物は急反落となり、高値警戒も手伝って下げ足を速め、サーキットブレーカーが2度も発動し、債券先物は143円10銭まで下落したのである。5日の債券先物の大引けは144円02銭。

 ということで債券先物のザラ場の過去最高値は、昨年4月4日のイブニングでつけた146円44銭となったのだが、引け値では4日の146円04銭だったのである。今年8月5日に債券先物は146円05銭で引けたことで、引け値としての過去最高値を更新した。その後じりじりと記録は更新され、28日に146円29銭で引けたことで引け値としての過去最高値を更新となったのである。

 ドイツなど欧州の国債はさらに買い進まれており、ザラ場の過去最高値146円44銭も視野に入る水準となった。しかし、10年債利回りは0.5%を割り込んだばかりであり、過去最低利回りの0.315%にはまだ距離がある。昨年4月5日に20年債利回りは0.845%に低下、30年債利回りは0.925%に低下していたが、こちらはまだ20年債は1.3%台、30年債は1.6%台にいる。

 現物債の上値の重さは投資家の慎重姿勢を物語っているようにも見える。今回の債券相場の上昇の背景には欧州の国債利回りの低下がある。つまり国内要因で買い進まれているわけではない。海外投資家の売買シェアの高い先物主体にやや投機的な動きも入っているとの見方も可能か。

 ここから債券先物はザラ場での過去最高値を更新し、いずれ現物債もそれを追ってくるのか。たしかに債券先物のザラ場での過去最高値更新の可能性はありうる水準にまできている。しかし、現物債についてはそこまで利回りが低下する理由が見当たらない。日銀の追加緩和観測がここにきて特に強まっているわけでもなく、時間軸に何かしら影響を与えそうな材料が出ているわけでもない。欧州の国債についていくのは良いが、深入りは禁物と言えそうである。

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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