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欧米の中央銀行の利上げは歴史的な出来事に

久保田博幸金融アナリスト

日米欧の中央銀行のなかで、イングランド銀行とFRBが先に出口に向かい、金融政策を正常化させてくると予想される。イングランド銀行は早ければ年内にも利上げを実施すると予想され、FRBも10月にテーパリングを終了させて、こちらも来年には利上げを実施してくると思われる。それでは日米欧の中央銀行が利上げを行うとすれば、いつ以来となるのであろうか。

最も近い時期に、利上げを行っていたのがECBであった。ECBが政策金利を最後に引き上げたのは2011年7月であった。政策金利を1.25%から1.50%に引き上げている。ユーロの信用危機の真っ最中であったが、インフレ警戒のために利上げを実施したのである。

イングランド銀行が最後に政策金利を引き上げたのは2007年7月であった。政策金利を5.50%から5.75%に引き上げている。インフレ圧力の強まりで、2007年3月の英消費者物価指数は政府が設定するインフレ目標の上限を突破していた。興味深いことにその前の月の6月のMPCでは当時のキング総裁は0.25%の利上げに一票入れたものの、結局5対4で利上げは見送りとなっていた。

米国が政策金利であるFF金利を引き上げたのは2006年6月が最後であった。この際に5%から5.25%に引き上げている。当時のバーナンキ議長は同年2月1日に就任し、6月のFOMCまで3回連続で利上げを決定していた。グリーンスパン議長のときから17会合連続で利上げを実施してきたが、このまま利上げを継続すれば、「住宅市場が減速する中で引き締めを続けることになる」と警告し、8月に利上げ停止を主導したとされている。

それでは日銀が最後に利上げをしたのはいつであろうか。それは福井総裁の時代で2007年2月であり、政策金利を0.25%から0.50%に引き上げていた。その前の利上げが2006年6月のいわゆるゼロ金利政策の解除であり、政策金利を0.25%に引き上げている。そのタイミングでFRBは最後の利上げを決定していたのである。

イングランド銀行のカーニー総裁、FRBのイエレン議長はともに利上げというか金融引き締めの経験はない(ただし、カーニー総裁はカナダ中銀総裁時には利上げ経験あり、最後は2010年9月)。ECBのドラギ総裁も就任が2011年11月であったため、利上げの経験はなし。日銀に至っては黒田総裁はもちろん、前任の白川総裁も利上げの経験はなかった。

イングランド銀行が利上げを決定すれば2007年7月以来となり、FRBが利上げを決定すれば2006年6月以来となる。これはこれで歴史的な出来事になると言ってよいのではなかろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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