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パソコンから見た失われた15年

久保田博幸金融アナリスト

自宅で使っているパソコンを買い替えた。これまで使っていたのはウインドウズのデスクトップのパソコンで、OSはXPではないが、そのあとのVISTAであった。最近になって動作が鈍くなったり、動かなくなるなどの症状が出ていたが、ついにそのパソコンから異音が出たことでハードディスクの寿命と決断して、新たなパソコンを購入した。

これまでもデスクトップを使っていたので、今回も同様にデスクトップにした。OSは考慮した結果、最新のウインドウズ8.1とした。安定性ではウインドウズ7といわれるが、個人で使用することもあり、使い勝手より新しいものを選択した。

故障しかけたVISTAのパソコンを購入したのは6、7年前かと思う。CPUなどの性能は劇的に向上しているのかもしれないが、ネットやもの書きに使う分にはそれほど体感的な速度に変わりなく、値段も当時とは大きな差はなかったように思う。

買ってみてから思ったが、果たして今後もこのようなデスクトップのパソコンに需要はあるのであろうか。XPの乗り換え需要でパソコンが一時的に売れたようだが、大きな箱型のデスクトップはいずれオフィスからはなくなってくると思われる。もちろん画像処理能力が必要とされる業務や、3Dゲームなどをしている個人ユーザーにはデスクトップが必要とされるかもしれない。しかし、表計算やワードなどを中心に使う業務には、それほどの処理能力は必要ない。動画も鮮明な4Kの映像を求める人はまだ一部であろう。

それならば現在のタブレットでも十分にその処理能力はある。ただし、画面が小さい、キーボード、マウスが使えないとの不便さがある。もちろんノートパソコンという選択肢もあるが、ディスプレーとキーボード、マウスが一体化し、そこにタブレットを接続すると通常のパソコンのような業務ができるようなコンポーネントが普及してくる可能性はある。

iPhoneの登場をきっかけに、世界的に一気に普及した現在のスマホやタブレットは少し前のデスクトップに匹敵するかそれ以上の性能を持っており、まさにパソコンである。パソコンの普及もNECの8001のように個人から始まり、性能が向上し、NEC9001のような業務用が誕生した。スマホやタブレットも同様に個人に普及し、いずれ業務用にも広がっていくことが予想される。ちょうどいまがその端境期にいるのではなかろうか。

パソコンが個人に普及したのがウインドウズ95が登場した1995年あたりであるが、その前に1992年に発売されたウインドウズ3.1のヒットが大きな起爆剤となっている。世の中にパソコンが普及を始めたころ、日本では政策金利が実質ゼロに近い状態となっていた。日本で失われた15年とされている期間は、ある意味、パーソナルコンピューターの普及期にあたっている。

もちろんパソコンの普及がデフレの主要因であると指摘したいわけではない。日本だけがそのマイナスの影響を受けたとは考えづらい。日本企業もパソコンの普及により恩恵を受けたところも多い。しかし、結果としては美味しいところは米国、韓国、中国などに持っていかれたような気もする。失われた15年の間に、本当は日本で何が失われたのか。パソコンなどひとつのものに焦点をあてて考察するとまた別の理由が見えてくるかもしれない。少なくとも日銀の緩和が足りなかったからというのは、まったく理由の説明にはなっていないことは確かであろう。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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