日米の物価指標とFRBの利上げのタイミング
6月26日に発表された米国のPCE価格指数は総合で前月比0.2%上昇、前年比では1.8%の上昇となった。FRBが物価指標の中で重要視している、エネルギーと食品を除いたコアPCE価格指数については前年比プラス1.5%となっていた。
6月27日に発表された日本の5月の全国消費者物価指数は、プラス3.4%とほぼ予想通りの数値となった。4月の3.2%からは上昇し、昭和57年4月以来、32年1か月ぶりの高い水準となった。ただし、5月以降は消費増税の影響が2.0%程度あると日銀は試算しているためそれを除くと1.4%となり、4月の1.5%から上昇幅は縮小した。
27日には5月の失業率も発表され、5月の完全失業率(季節調整値)は3.5%となり、4月の3.6%から低下した。有効求人倍率(季節調整値)は1.09倍と、21年11か月ぶりの高い水準となった。ちなみに日本の自然失業率(NAIRU)は3.5%あたりとの見方もある。
ただし、23日の黒田日銀総裁の発言からは、日銀は今後夏場に向けては、前年比プラス幅が一旦1%近傍まで縮小するとしている。その後は基調的な物価上昇圧力が引き続き強まっていく中で、本年度後半から再び上昇傾向を辿ると予想している。
円安などによる影響が後退し、いったん物価上昇幅は縮小するが、雇用環境の改善等もあり、年度後半から切り返し日銀の物価目標2.0%に接近するというのが、現在、日銀が描いているシナリオであろうか。このシナリオを前提にすれば追加緩和の必要はない。むしろ予想以上に物価上昇圧力が強まった際のシナリオの方が市場が動揺してくる可能性がある。
米国についてはこのあたりで物価が推移している限りは、物価の動きは金融政策には影響を与えないと思われる。セントルイス連銀のブラード総裁は26日、FRBの利上げに関して2015年1~3月期終わりになると述べていた。ブラード総裁は今年のFOMCで投票権はなく、セントルイス連銀が投票権を持つのは2016年となる。その意味ではブラード総裁の発言はあくまで個人的な見解となろうが、資産買入プログラムが10月に終了すれば、利上げのタイミングはそのあたりではないかと考えられる。
6月のFOMCでは米国債とMBSの毎月の買入額を100億ドル縮小し、350億ドルにすることを決定した。予定通りに淡々とテーパリングは進行している。このペースで行くと7月29~30日のFOMCで毎月の買入額を250億ドルに減少させ、9月16~17日に150億ドル、10月28~29日に150億ドルを一気に減らしてゼロとすれば、10月に終了することが予想される。
2006年3月に日銀は量的緩和政策を解除したが、ゼロ金利政策を解除、つまり利上げを行ったのは同年7月であり、量的緩和解除から4か月後であった。FRBもテーパリング、つまり量的緩和政策が完了次第、利上げというかゼロ金利政策の解除に向けた作業を開始してくるとみられる。何かしら外的要因等でのリスクの高まりがなければ、急がずともそれほど時を置かずに利上げを行ってくるとみるのが自然ではなかろうか。その時期は半年以上空けるような事はむしろ考えづらく、ブラード総裁の示した2015年1~3月期あたりになると見てよいかと思われる。