Yahoo!ニュース

3月に都銀は債券を再び売り越し

久保田博幸金融アナリスト

21日に日本証券業協会が発表した3月の公社債投資家別売買高(除く短期証券)によると、都銀は6024億円の売り越しとなった。都銀は昨年4月の日銀の量的・質的緩和導入以降、売り越しが続いていたが、2月は11か月ぶり買い越しとなっていた。しかし、3月は再び売り越しとなった。

2014年3月の公社債投資家別売買高(除く短期債)、プラスが投資家の買い越し

日本証券業協会のデータより、単位は億円

都市銀行-6024、地方銀行 6291、信託銀行 2329、農林系金融機関 12133、第二地銀協加盟行-1173、信用金庫 6729、その他金融機関 3246、生保・損保 8361、投資信託 6071、官公庁共済組合 200、事業法人 1556、その他法人 3452、外国人 4945、個人-167、その他-33,954、債券ディーラー-109

国債投資家別売買高から年限別(中期・長期・超長期、ただし発行時のもの)で見てみると、都銀は超長期債を2585億円売り越し、長期債を2兆3987億円買い越し、中期債を2兆7946億円売り越している。中期債から長期債に乗り換えながら、全体の残高は落としている格好となった。

都銀以外のいわゆる機関投資家は買い越しとなっており、特に買い越し額が大きかったのが、農林系金融機関の1兆2133億円。国債の年限別でみると超長期を6108億円、長期を5087億円、それぞれ買い越している。次ぎに買い越し額が大きかったのが生損保の8361億円の買い越しで、こちらは超長期を4017億円、中期を3070億円買い越していた。続いて、信金が6729億円、地銀が6291億円、投資信託が6071億円の買い越し。外国人も4945億円の買い越しとなった。

3月の日本の債券相場は10年債の利回りで0.6%近辺、債券先物で145円を挟んでの動きとなり、方向感に乏しい展開が続いていた。ウクライナ情勢の緊迫化による地政学的リスクの増加や、イエレンFRB議長による利上げの時期に関する発言等はあったが、円債のトレンドが変わるようなことはなかった。

日銀による国債買入は続き、都銀はポジションを落としながらデュレーションを調整している。他の機関投資家は淡々と残高を積み増している格好となっている。債券相場の上値が重いのは米債の下落などもあるが、10年の0.6%割れでは高値警戒感も強い。しかし、3月の投資家動向を見ても、投資家の買い需要は強いように思われ、押し目では着実に買いが入る。これが現在の債券相場の膠着状態を生み出している。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

牛さん熊さんの本日の債券

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月20回程度(不定期)

「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、当日の債券市場を中心とした金融市場の動きを牛さんと熊さんの会話形式にてお伝えします。昼には金融に絡んだコラムも配信します。国債を中心とした債券のこと、日銀の動きなど、市場関係者のみならず、個人投資家の方、金融に関心ある一般の方からも、さらっと読めてしっかりわかるとの評判をいただいております。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

久保田博幸の最近の記事