ギリシャの国債入札再開と欧州危機の収束
4月10日にギリシャは5年債の起債で30億ユーロを調達した。中長期国債の発行は実に4年ぶりとなる。入札では約600の投資家から200億ユーロ超相当の応札があったそうで(WSJ)、発行利回りは4.95%となった。欧州の信用危機の発端となったギリシャが国債発行を再開したことで、2010年から始まった欧州の信用危機が収束してきたことを印象づけるものとなった。
ギリシャの10年債利回りは2012年のピーク時には40%を超えていた。しかし、その後低下傾向となり、先日9日には6%を割り込んで来た。ギリシャは緊縮財政の効果もあり、2013年には基礎的財政収支は黒字化したとされる。
2007年あたりからのサブプライム問題を発端とした金融危機は、2008年9月のリーマン破綻でピークを迎えた。それが経済に深刻な打撃を与えることになり、その影響は世界各国に同時にかつ急速に広がるという異常事態となり、日本経済も大きな打撃を受けた。
このためイングランド銀行の国債買入に続き、日銀も国債買入を大幅に増加させ、FRBも国債買入を再開した。欧米の中銀が連携して危機対応を行なう姿勢を鮮明にしたといえる。米国についてはサブプライム問題からリーマン・ショックを経て、金融機関や住宅市場に多大な影響が出たことで、国債など債券の買入を行った。これにより長期金利には低下圧力が掛かった。
その長期金利に今度は問題が発生した。ちなみに長期金利とは10年国債の利回りのことを指す。2010年1月に欧州委員会がギリシャの財政に関して統計上の不備を指摘し、ギリシャの財政状況の悪化が表面化した。ギリシャは2009年10月に政権交代が行われたが、パパンドレウ新政権に変わったことにより前政権が行ってきた財政赤字の隠蔽が明らかになったのである。これを受けて格付け会社は、相次いでギリシャ国債の格付けを引き下げ、ギリシャ国債が暴落したのである。4%台にあったギリシャの長期金利は10%台に跳ね上がり、さらに同様に債務状態が悪化しているポルトガルやスペインなどにも飛び火したのである。
欧州の信用危機は財政や国債の問題が原因となり、それに対処したのは欧州連合やIMFなどではあったが、市場に対しての影響力としては日米欧の中央銀行による非伝統的手段による国債の買入などが大きかった。これらは時間稼ぎにすぎないものの、市場の動揺を抑える働きをした。2011年11月3日のEC政策B理事会において期間3年の長期リファイナンス・オペ(LTRO)の新設が決定し、2012年9月6日のECB理事会で、市場から国債を買い取る新たな対策を正式に決定した。
すでにギリシャの長期金利はピークアウトしていたが、このあたりからさらにギリシャの長期金利は低下しており、2013年1月には10%近辺まで低下していた。ただし、リスクオフ、リスク回避の動き、質への逃避とか騒がれて買われていた円がピークアウトしたのはチャートをみると2012年10月あたりと、ギリシャの長期金利の動きなどからみてややズレが生じていた。いつ円高の動きが反転してもおかしくないタイミングであらわれたのがアベノミクスであった。
なにはともあれ、欧州危機はひとまず去った。ウクライナ情勢など気になるものの、百年に一度とされるような金融危機が立て続けに起き、それが収束に向かっていることは確かである。ここにきての米国株式市場の乱高下などは、危機後の動向を見極めるべく動いているようにも思えなくもない。