今年のジャクソンホールには欧米の主要中銀トップは欠席
例年8月に米国ワイオミング州ジャクソンホールで開催されるカンザスシティ連銀主催のシンポジウムは、2010年の同シンポジウムの講演で、バーナンキ議長がQE2を示唆したように、過去の歴史を見ても興味深い出来事が多かったため、市場関係者からの注目度が高い。
このシンポジウムでは、ある程度マスコミ等から遮断されての意見交換の場もあるとみられている。これには著名学者などとともに、日銀総裁を含む各国の中央銀行首脳が多数出席することで、金融関係者によるダボス会議のようなものになっている。
このようなシンポジウムが、ワイオミング州ジャクソンホールという小さな町で行なわれるかといえば、FRB議長だったポール・ボルカー氏がフライ・フィッシングの趣味があり、この街を良く訪れていたお気に入りの場所であったからという説がある。
ロシア危機とヘッジファンド危機に見舞われた1998年に、当時のグリーンスパンFRB議長がこのカンザスシティ連銀主催のシンポジウムの合間に FRB理事や地区連銀総裁とひそかに接触し、その後の利下げの流れをつくったと言われた。
1999年には日銀の山口副総裁(当時)と、バーナンキ・プリンストン大学教授(現FRB議長)が、日本のバブルに対する日銀の金融政策の評価をめぐり、論争を行ったことでも知られる。
2005年に退任を控えたグリーンスパンFRB議長がジャクソンホールに登場した際には、会場には前議長の功績を称える声が広がったそうである。
2010年8月27日のジャクソンホールでの講演で、バーナンキFRB議長はQE2を示唆する行った。この際に出席していた白川日銀総裁(当時)は予定を1日に早めて急遽帰国し、8月30日の9時から臨時の金融政策決定会合を開催し、新型オペの拡充策を決定した。
現職のバーナンキ議長は任期最後となる今年のジャクソンホールでのシンポジウムを欠席した。バーナンキ議長は2006年の就任以降、このシンポジウムで毎年基調演説をしていた。個人的なスケジュールの都合だとしているが、9月のFRBの量的緩和政策縮小観測も流れているなかにあり、また次期FRB議長への関心も高いなか、参加を控えたのではないかとの憶測もあるが、報道官は個人的な事情としている。
昨年のジャクソンホールのシンポジウムでは、直前になってECBのドラギ総裁が参加を取りやめた。向こう数日に多忙を極めると予想されるためとECB報道官は語っていたが、新たな国債買入の政策に対するバイトマン総裁との対立なども影響かとの観測もあった。そのドラギ総裁は今回も出席しない。
今年就任したばかりのカーニー・イングランド銀行総裁も出席しない。フォワード・ガイダンスを取り入れたばかりのECBとイングランド銀行の総裁も揃って出席しないのは何故なのか。たまたまそうなってしまったのかもしれないが、その言動に注目が集まりかねないために、控えた可能性もある。
今回、日銀の黒田総裁は出席し、イングランド銀行のビーン副総裁、ECBのコンスタンシオ副総裁は参加する。次期FRB議長候補でもあるイエレン副議長も出席するが、もう一人の有力議長候補であるサマーズ氏は出席しない。
バーナンキ議長、ドラギ総裁、カーニー総裁は何故、今回のジャクソンホールでのシンポジウムを欠席したのか。むろん出席する義務があるシンポジウムではないが、出席することに本来は意義があるはずのものである。主要中銀のトップ3人が欠席したという事実については、それぞれ何かしら事情というか、意味もあるはずであり、今後の金融政策の行方を占う上でも、そのことを認識しておくことも必要となりそうである。