Yahoo!ニュース

7月も都銀は国債を売り越し。異次元緩和後の国債売買高は減少傾向

久保田博幸金融アナリスト

日本証券業協会は8月20日に7月の公社債投資家別売買高を発表した。7月の債券相場は先物で143円、10年債利回りで0.8%を挟んでの比較的落ち着いた動きとなっていた。

短期債を除いたベースで4月、5月、6月と1兆円を超える売り越しとなっていた都市銀行は、7月も9240億円の売り越しとなり、1兆円を超えることはなかったが1兆円近く売り越しとなっていた。国債の投資家別売買高を確認すると、中期債を1兆4402億円売り越していた。長期債は6613億円の買い越し、超長期債は1087億円の売り越しに。

4月からの都市銀行の動きをみると、長期債は買い越しの月もあるが、超長期債と中期債は売り越しが続いており、特に中期債の売り越しが目立つ。ちなみに、6月の都銀の売買高は3兆5165億円と2004年4月以降では最低となっていたが、7月は7兆2864億円と6月の約2倍程度に回復していた。

ほかの投資家の売買状況を確認すると、買い越しの最大手は6月に続き信託銀行となり、1兆612億円の買い越し。超長期債を1236億円、長期債を3192億円、中期債を4185億円それぞれ買い越しとなっていた。

続いて外国人が6472億円の買い越し。超長期債を969億円買い越し、長期債を2177億円売り越し、中期債を7656億円買い越し。

生損保は6279億円の買い越し。超長期債を6543億円の買い越し、長期債は2523億円のこちらは売り越し、中期債は1006億円の買い越しに。

地銀は2578億円の買い越し、農林系金融機関は2601億円の買い越し、投資信託は3582億円の買い越しに。

7月も目立ったのは都銀の売りであり、売り越し額は1兆円を割り込んだが、日銀の異次元緩和以降の国債の売り越しが進み、その資金は主に日銀の当座預金に滞留している格好となっているようである。

参考までに国債の投資家別売買高(一覧)を基に、投資家全体の売買高の状況を確認してみたところ、7月は国債合計(短期債除く)で、126兆9632億円となっていた。データの残る2004年4月以降での最低は2009年5月の120兆3842億円となっており、7月はかなり低い水準となっている。異次元緩和が決定された4月が約199兆円、5月が約171兆円、6月が約146兆円となっており、次第に売買高が減少している。日銀の巨額の国債買入が影響しているとみられるが、今後はこの全体の売買高についてもチェックしておきたい。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

牛さん熊さんの本日の債券

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月20回程度(不定期)

「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、当日の債券市場を中心とした金融市場の動きを牛さんと熊さんの会話形式にてお伝えします。昼には金融に絡んだコラムも配信します。国債を中心とした債券のこと、日銀の動きなど、市場関係者のみならず、個人投資家の方、金融に関心ある一般の方からも、さらっと読めてしっかりわかるとの評判をいただいております。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

久保田博幸の最近の記事