FOMCでの量的緩和縮小決定が9月とされる理由
2012年9月のFOMCで住宅ローンを担保にした証券であるMBSを毎月400億ドル追加購入することを表明したが(QE3)、物価安定の下で労働市場の改善が実現できるまでMBSの購入を継続するとして、このMBSの買入はオープンエンド型(無期限)となった
2012年12月のFOMCで、年末に終了するツイストオペの代わりに毎月450億ドル規模の米国債購入を決定した。これまでのツイストオペでは、450億ドルの短期債を売って長期債を購入していたが、短期債を売却しない分、FRBのバランスシートは拡大することになる。これにより現在FRBは、400億ドルのMBSの買入を含めると月額850億ドルを買い入れている。国債の償還分の買入も行っている。この買入もオープンエンド型(無期限)となった。
この際に少なくとも2015年半ばまで低金利を維持するとの文面が声明文から削除され、その代わりに、米失業率が6.5%を上回り、向こう1~2年のインフレ率が2.5%以下にとどまると予想される限り、政策金利を低水準にとどめる、という数値のガイダンスに変更された。これがフォワード・ガイダンス(時間軸政策)である。
FRBのバーナンキ議長は2013年6月19日のFOMC後の記者会見において、失業率が低下基調を維持するなどの経済情勢が見通しどおりに改善すれば、今年後半に資産購入プログラム(LSAP)の規模縮小をスタートさせるのが適当と見ていると述べ、一定のペースで規模を縮小し、失業率が7.00%程度に下がっていくことを目安に、来年半ばにかけて緩和策を終了するという意向を示した。
FRBはオープンエンド型としていた債券の買入については、無期限ではなく来年半ばにかけて終了する意向を示した。その後はデュアル・マンデートに目標値を置いた政策金利を超低位に維持するという量から金利に移行させようとしている。これまでは出口を見えにくくさせての効果を意識していたが、それはあくまで非常時の対応であり、世界的なリスク後退と景気の回復を確認し、危機対応レベルを一段階引き下げようというのが今回のFRBの意図とみられる。
FOMCメンバーの多くは早期の量的緩和縮小については賛同しているように思われることに加え、バーナンキFRB議長の会見が予定されている9月に決定されるとの見方が市場関係者の間では強まっている。上記のように重要な政策変更があったのは昨年もFRB議長会見が予定されていたFOMCであったことからも、その可能性は高いと言える。今後のFOMC後の会見が予定されているのは、9月と12月であるが、12月では月日が経過してしまうことに加え、次期FRB総裁の人選もある程度進んでいると予想され、バーナンキ議長としては自らの影響力の残る9月に決定したいのではないかとの観測もある。
FRBの債券買入縮小は、余程の外的ショックが発生したり、雇用関係の数値が大きく悪化しない限りは既定路線であり、9月のFOMC(17日、18日)で縮小が決定されよう。