欧米3大中銀のフォワード・ガイダンスへの移行

6月19日のFOMC後の記者会見において、バーナンキFRB議長は失業率が低下基調を維持するなどの経済情勢が見通しどおりに改善すれば、今年後半に資産購入プログラム(LSAP)の規模縮小をスタートさせるのが適当と見ていると述べ、一定のペースで規模を縮小し、失業率が7.00%程度に下がっていくことを目安に、来年半ばにかけて緩和策を終了するという意向を示した。

FRBは昨年12月のFOMCで、少なくとも2015年半ばまで低金利を維持するとの文面を声明文から削除し、その代わりに、米失業率が6.5%を上回り、向こう1~2年のインフレ率が2.5%以下にとどまると予想される限り、政策金利を低水準にとどめる、という数値のガイダンスに変更された。いわゆるフォワード・ガイダンスである。

縮小緩和時期については、予断を与えないようにしているが、早ければ9月あたりから開始かとの見方が強まりつつある。つまりFRBはその金融政策の軸足を中央銀行のバランスシートの拡大から、インフレ率の見通しが2.5%を超えない範囲において、米失業率が6.5%程度で安定するまで事実上のゼロ金利を継続するというフォワード・ガイダンスに移してくることが予想される。

ECBのドラギ総裁は7月4日の定例理事会後の記者会見で、「理事会はECBの主要金利が長期間にわたり、現行水準もしくはそれを下回る水準になると予想する」と発言した。これまでECBは、金利に関して予断を持たず、形式上は事前に将来の金融政策についてコミットしないという方針を貫いてきたが、その方針を変更してきた。つまりこちらもフォワード・ガイダンスを取り入れた政策に移行しつつある。

7月4日のイングランド銀行(BOE)の金融政策委員会(MPC)では、全員一致で政策の現状維持を決めた。7月31日・8月1日に開催される次回会合では、インフレ・レポートと同時に、何らかのフォワード・ガイダンスを導入するとしている。

FRBは債券買入という量的緩和政策に加えて、フォワード・ガイダンス(時間軸政策)を持ってきたが、これは2本柱を設置したというよりも、柱を量的緩和からフォワード・ガイダンスに移行させることを念頭に置いたものともみられ、それにECBやBOEも追随した格好となった。

WSJによると、FRBは7月30日、31日のFOMCで、金融政策の先行き見通しを示す指針であるフォワード・ガイダンスをより詳細にするか、修正することを検討する可能性があると報じた。これは量的緩和という柱を後退させる上での市場の動揺に配慮したものではないかと推測される。

FOMCは7月30、31日の日程であるが、7月31日、8月1日の日程でイングランド銀行のMPCが開催される。また、8月1日にはECB政策理事会が開催される。FRBの動向を確認して、イングランド銀行とECBは、フォワード・ガイダンスに対する詰めを急ぐのではないかと推測させる。欧米の3大中央銀行が、有事の対策としての国債買入を中心とした異次元緩和から、平時の政策に戻ろうとしている。それだけ世界的なリスクが後退したためとみられるが、市場に配慮してあまり目立たないように進めようとしているとも思われる。それでも大きな政策変更であることに違いはなく、来週のFRB、BOE、ECBの動きにはかなり注目する必要がありそうである。

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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