イタリアの2年債利回りが過去最低になったことの意味
4月22日の欧州市場では、イタリアの2年国債の利回りが一時1.208%まで下げ、ブルームバーグによるとデータ集計を開始した1993年以来の最低を記録したそうである。23日には1.2%を割り込みさらに記録を更新し、10年債利回りは2010年11月以来の4%割れとなった。
22日の日本時間の夕方に、イタリアの2年債利回りが過去最低になったとの記事が出ていたが、これを見て一瞬目を疑った。ドイツやベルギー、オーストリアとかの2年債利回りではなく、イタリアの2年債利回りが過去最低を記録したのである。これは欧州のリスク後退を示す、大きな象徴的な出来事ではあるまいか。
ブルームバーグによるとイタリアの15年債利回りも4.23%と2006年12月以来の低水準となったそうである。2006年末と言えば、ギリシャ・ショックどころか、リーマン・ショック以前の水準である。
2010年1月に欧州委員会がギリシャの財政に関して統計上の不備を指摘し、ギリシャの財政状況の悪化が表面化した。ギリシャの格下げ等も伴いギリシャの国債が急落したのが欧州の信用不安の発端である。
それがポルトガルやスペインを経て、イタリアに波及した。ユーロというシステムの維持が可能かどうか試されることになった。その意味ではイタリアの金利、つまりイタリア国債の価格の動きが、ユーロの安定度を測るひとつの目安ともなっていたはずである。
そのイタリア国債の利回りが低下し、2年債に至っては過去最低水準まで低下したという。これはつまりユーロ圏というシステムへの不安とともに、信用不安もかなり後退してきたことの現れと言えるのではなかろうか。
日本ではアベノミクスの登場と、黒田日銀による異次元緩和に浮かれ、このあたりの状況についてあまり関心はなさそうだが、そもそも昨年末あたりからの急激な円安と株高の根底には、欧州の信用リスクを中心とした世界的なリスクの後退がある。その流れをアベノミクスへの期待が加速させ、ヘッジ・ファンドなどが仕掛けやすい環境を形成したとみられる。
株価の上昇については、日本株ばかりでなく米国株式市場でもダウ平均が過去最高値を更新してきた。これには日米欧の中銀による積極的な資金供給策による影響ばかりでなく、世界経済の回復期待があろう。それも欧州のリスクの後退が背景にあると考えられる。
今回の円安・株高の要因としてアベノミクスがどの程度関与しているのかを具体的に計ることは難しい。ただし、アベノミクスだけで今回の円安・株高が生じたとみて、その効果に絶対の信用を置くこともどうかと思う。このあたりは冷静な分析も求められる。
ちなみにイタリアに限らず、スペインやポルトガルの国債が今回買われた背景には、ECBの利下げ観測に加え、日本の生保や年金による買いが今後入るとの期待感もあろう。しかし、少なくとも期待感が不安感を打ち負かしている環境そのものの要因を理解することも重要かと思われる。