出口を意識しつつあるFRB
20日に発表された1月29、30日開催のFOMC議事要旨によると、何人かの委員が、「経済見通しの変化や、資産購入の有効性とコストに対する評価の変化に応じ、資産購入のペースを変える準備をすべきだと強調した」とある。現在、FRBは毎月総額で850億ドルの米国債などを購入している。
その前に資産買入についてのリスクも述べられていた。何人かの委員からは出口政策の困難さが指摘された。つまり買い入れた資産をスムーズに売却が可能であるかということになる。日本の場合を考えると、たとえ物価が上昇してきたからといって日銀が保有する国債を果たして売却できるかどうか。日本よりは容易かもしれないが、市場にも大きな影響を与えかねないはずである。
数人の委員はインフレに対する警戒を指摘し、さらに何人かの委員は金融の安定を妨げるような市場行動への警戒を指摘していた。これに関しては、FRBのスタイン理事が2月7日の講演で、長期間の低金利政策は金融安定を脅かすリスクをもたらしかねないと警告していた。つまり資産バブルへの警戒である。資産価格が加熱状態にあることを示す決定的な根拠が出そろうまで待つのでは遅いとの指摘もあった。
さらにFOMCの議事要旨によると、何人かの委員から、「有効性やコスト、リスク次第では、労働市場が相当程度改善したと判断する前に資産買入を減速もしくは停止せざるを得ないのではないか」との指摘もあった。
米国の経済情勢が改善しつつあることは確かであり、その背景のひとつには欧州のリスク後退もある。リーマン・ショックに続く欧州の信用不安により、世界的な金融不安の高まりが経済にも影響し、日欧米の中央銀行は積極的な金融緩和策を講じてきた。米国では財政の崖問題等もあったが、これは現実にはさほど大きな懸念材料ではなかった。根本的なリスクは欧州にあった。今後も米国の債務問題等は残るが、それで非常時にあったための積極的金融政策を続けなければいけない理由とはならない。
もちろんすぐに撤退することは考えづらくても、経済が上向きとなってきているとなれば、通常の金融政策に戻ることを考えることは自然なことと思われる。それに対して日本ではデフレからの脱却を旗印に、さらなる追加緩和の可能性が高まっており、その追加緩和に積極的な人物を日銀総裁に推そうとしている。金融政策にはタイムラグがあるとともに、リスクが高まっている際には効果が薄いが、そのリスクが後退すれば緩和効果が強まることも考えられる。その緩和効果がどのようなかたちで現れるのかも、今後は注意する必要がある。今回のFOMCの議事要旨からはそのリスクも意識して、今後FRBは動いてくるであろうと思われる。