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食料品値上げラッシュの「犯人」、パーム油が過去最高値を更新

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト
(写真:イメージマート)

食料品価格の値上げラッシュが続いているが、その隠れた「犯人」とも言えるのが食用油の高騰だ。直接食用に供される食用油そのものに留まらず、あらゆる加工食品の原材料の一つになっているためだ。

ハンバーガーショップのポテトフライ、ポテトチップなどのスナック菓子はもちろん、チョコレートやマーガリン、マヨネーズ、ドレッシング、調理パンや冷凍食品、各種総菜など、原材料名の表示に「植物油脂」が含まれていない食品を探す方が難しいかもしれない。このため、日々家庭で食用油を使って調理を行っている人はもちろん、自炊をせずに食用油を購入していない人でも、各種の加工食品を通じて日々多くの食用油を消費している。この食用油価格の高騰が、多くの食料品価格の値上げを加速させているのだ。

国際連合食糧農業機関(FAO)によると、昨年12月時点の世界食料価格指数は前年比で23.1%上昇しており、食品価格全体の値上がり傾向が極めて強いことが確認できる。その内、食用油に関しては36.1%も上昇しており、この値上げ圧力を食品会社が企業努力で吸収するのは不可能であり、食料品の小売価格に対する転嫁が加速しているのが現状である。

しかも、この食用油の値上がりは更に続く可能性が高い。原材料であるパーム油や大豆油などの値上がり傾向が続いているためだ。例えば、今年1月にはパーム油が過去最高値を更新している。もともと、1)主産地東南アジアの天候不順による生産障害、2)パンデミックによる農場での労働力不足、3)パンデミックで落ち込んでいた需要回復などの影響でパーム油は昨年に過去最高値を更新していたが、今年1月にはインドネシアが輸出規制を発表したことで、更に急騰しているのだ。国際指標となるマレーシア産のMPOCパーム油先物相場は、年初の1トン=4,718リンギットに対して、1月31日高値は5,700リンギットに達している。1カ月で20%もの値上がりであり、卸売価格や小売価格への転嫁は避けられない状況になっている。

インドネシアでは、国内食用油価格の高騰に対応するため、パーム油の輸出業者に対して輸出用の20%を国内販売に切り替えるように指示が出されている。これによってインドネシア国内の食用油価格高騰にはブレーキが掛かるが、日本を含む輸入国にとっては、極めて深刻な事態になり得る。今後は大豆油など他の食用油の調達に切り替える動きも強まることになり、パーム油以外の食用油価格の高騰も避けられない状況になっている。

パーム油といってもスーパー等で見かけることは殆どないと思われるが、業務用では大量消費されている食用油の代表格である。例えば、マクドナルドのポテトを揚げている油は「牛脂とパーム油のブレンド油を使っています」(同社ウェブサイト)とされている。パーム油先物価格の高騰を見る限りだと、食用油価格の高騰を通じた食料品価格の更なる値上げを覚悟しておく必要があろう。家計に厳しい状態が続く見通しだ。

マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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