国連食糧農業機関(FAO)が10月7日に発表した世界食料価格指数(2014~16年=100)は、8月の128.5から130.0まで上昇し、2011年9月以来の高水準に達した。前月比で1.2%高、前年同月比で32.8%高であり、食料価格の急ピッチな上昇が続いていることが確認できる。

その2011年には、中東・北アフリカで大規模な抗議・デモ活動が広がりをみせた「アラブの春」が発生している。「アラブの春」は、その一因として小麦価格の高騰などを受けて貧困層の困窮が深刻化した影響が指摘されているが、現在の食料価格はこうした大規模騒乱を引き起こす原因になりかねないレベルの高さになっている。

品目別だと、前年同月比で肉が26.2%高、乳製品が15.2%高、穀物が27.4%高、植物油が61.2%高、砂糖が53.4%高となっている。一部の品目のみが高騰しているのではなく、食料価格全体が高騰している。

今年の食料生産は全般的に安定しており、FAOは2021/22年度の穀物生産は前年度比で1.1%の増産になるとの見通しを示している。しかし、昨年にラニーニャ現象の影響で在庫の取り崩しが加速していたことに加えて、パンデミックによって停止していた飲食店の営業が世界的に再開される中、需要を満たす供給量を確保することが難しくなっている。世界的なサプライチェーンの混乱もあって必要な場所に必要な量の食料を確保することが難しくなっており、歴史的とも言える高騰局面を迎えている。

日本でも、10月には小麦粉、パスタ、食用油、コーヒー、マーガリンなどの価格引き上げに踏み切ったメーカーが多く、既に家計の食卓を値上げ圧力が直撃している。しかし、こうした値上げは過去の食料価格高騰の転嫁であり、足元で食料価格指数が上昇を続けていることは、今後も各種食料価格の値上げが更に続く可能性が高いことを示唆している。

■ガソリン価格も高騰している

一方、資源エネルギー庁が10月6日に発表した4日時点のレギュラーガソリン価格は、全国平均で1リットル=160.0円となった。前週から1.3円上昇して、5週連続の値上がりになっている。こちらは2018年10月以来となる、約3年ぶりの高値圏だ。

パンデミックからの世界経済の回復が急ピッチに進んでいることで、世界的に輸送用エネルギーの需要が急激に回復している。しかも、8月末にはメキシコ湾の原油生産地帯を大規模なハリケーンが直撃したことで、不測の供給障害が発生したことも、原油需給を引き締めている。10月4日には石油輸出国機構(OPEC)プラスの閣僚級会合が開催されたが、米国などの増産要請にもかかわらず、従来の合意内容に沿う緩やかな増産を確認するのに留め、積極的な政策対応を講じることを見送ったことも、原油高を加速させている。

従来だと、原油価格が上昇すればいずれかの産油国が増産する傾向にあったが、近年の脱炭素、脱石油の大ブームで石油会社は新たな投資に消極的であり、原油高でも増産を促すことが難しい状況になっている。OPEC加盟国でさえも、アンゴラやナイジェリアなどが投資とメンテナンス作業の欠如を受けて、OPECが割り当てた産油量さえも満たす事が難しくなり始めている。

欧州では、冬の暖房用エネルギー需要を確保できるのか緊張感が高まっており、原油のみならず天然ガスや石炭価格さえ高騰している。仮にこの状況で寒波が厳しい冬になると、エネルギー不足やエネルギー価格の高騰で暖房を使うことができずに、大量の死者が発生する可能性さえも想定しておく必要性が浮上している。

原油価格の高騰は、ガソリンや軽油、灯油といった石油製品価格の値上げを促すことはもちろん、電力料金価格、ハウス栽培の野菜価格、輸送コストなど生活に直結した幅広いモノやサービスの値上げ圧力に直結することになる。

■低所得層を直撃する「スタグフレーション」の脅威

食料価格とガソリン価格が同時に高騰していることは、特に所得水準が低い家計に対して、大きなダメージをもたらすことになる。パンデミックによる経済的ダメージからの立ち直りが遅れている低所得層では、仮に賃金水準が変わらない状態でも、食料やガソリンに対する支出増大が、家計の負担感を高めることになる。

景気停滞と物価上昇が同時に進行する「スタグフレーション」化が始まっている可能性も高まっている。パンデミックからの経済活動、日常生活の復興が期待される一方で、大きくかつ深刻な経済リスクが徐々に顕在化している。