トヨタ自動車は8月19日、9月の世界自動車生産を計画の90万台弱から50万台強に引き下げた。世界的な半導体不足の影響は限定的だったが、自動車部品工場が集中する東南アジアで新型コロナウイルスの感染が拡大する中、部品調達が停滞しているため国内外の工場が稼働縮小を迫られている。

業績が好調だったトヨタ自動車の大規模減産が報じられると、同日の同社株価は前日比4.4%安と急落し、他の自動車メーカーや部品メーカーも連想売りで大きく下押しされる展開になった。日経平均株価も304.74円安の2万7,281.17円まで下落している。一種の「トヨタ・ショック」が発生した格好になる。

一方、これと同様に大きなダメージを受けたのが、プラチナ(白金)とパラジウムだ。指標となるNYプラチナ先物相場は1オンス当たりで前日比25.20ドル安の971.20ドル、パラジウム先物相場は同125.40ドル安の2,297.90ドルとともに急落している。プラチナやパラジウムは自動車の排ガスから有害物質を除去するための触媒用貴金属として使用されているが、トヨタ自動車の大規模減産によって、触媒用貴金属需要の落ち込みも同時に警戒されたためだ。

プラチナ相場は今年2月16日には1,348.20ドルまで値上がりしていた。新型コロナウイルスのショックが緩和されて自動車生産・販売が回復したことに加えて、中国などで環境規制強化からより多くの触媒用貴金属が必要とされる状況が、プラチナ需給の引き締まりを強く警戒させた結果である。しかし、6月前後から半導体不足による自動車工場の稼働停止報告が目立つ状況になると1,000~1,100ドル水準までコアレンジを切り下げ、7月下旬以降は東南アジアの新型コロナウイルスの流行で部品工場におけるクラスター発生、部品生産・流通の停滞報告から更に1,000ドル台も割り込む展開になっていた。

その意味では、トヨタ自動車の大規模減産も「サプライズ」というよりも「やはりトヨタもか」といった受け止め方の方が優勢だが、それでも自動車生産環境の苦境を象徴する動きとして、プラチナやパラジウム価格を大きく押し下げる要因になっている。

自動車に対するニーズそのものが大きく落ち込んでいる訳ではないため、半導体不足や部品調達の停滞が解消に向かえば、逆に自動車増産の動きがプラチナやパラジウム需要を回復させるとの期待感もある。しかし、トヨタ自動車の減産発表を受けて、まだ厳しい状況が続くとの警戒感が強くなっている。プラチナとパラジウム相場の急落は、まだこの問題に出口が見えてきていないことを示唆しているようだ。