原油価格がマイナス化してから1年、今の原油価格はどうなっている?

(写真:ロイター/アフロ)

1年前の2020年4月20日、NY原油先物相場は期近物が1バレル=マイナス40.32ドルまで急落し、歴史上初めてのマイナス価格に陥った。新型コロナイルスの感染被害拡大で需要が急速に失われたことで在庫が急激に積み上がり、米国においては貯蔵能力の限界に近づいたことで、売り手が買い手に料金を支払って、原油在庫を引き受けてもらう異常事態に陥った。マイナスの原油価格は4月20日と21日の二日で終わったが、パンデミックのショックの大きさにマーケットは強い恐怖感を抱いた。国際エネルギー機関(IEA)は、この状況を「暗黒の4月(Black April)」と称している。

それから1年が経過したが、今年4月20日のNY原油先物相場の終値は62.44ドルとなっており、1年前とは原油市場の景色が一変していることが確認できる。1年で100ドルを超える値上がりは過去に経験したことのないものであり、1年前のショックの大きさと同時に、その後の1年で原油市場環境の急激な改善が進んでいることも確認できる状況にある。

需要サイドに目を向ければ、IEAの推計で20年は世界石油需要が日量870万バレル喪失されたが、今年は570万バレル増加する見通しになっている。20年は世界石油需要の約1割が喪失されたが、その66%を今年中に回復できるとみられている。

まだパンデミック前の状態に回帰できる明確な見通しは立っておらず、新型コロナウイルスの感染状況によっては、改めて需要見通しの引き下げを迫られる可能性もある。実際に足元では、欧州、インド、ブラジルなどの感染被害が深刻であり、4~6月期の需要見通しについては下方修正する動きも目立つ。しかし、国際通貨基金(IMF)が世界経済成長率について、昨年のマイナス3.3%からプラス6.0%まで急転回することを予想していることもあり、石油需要環境の回復傾向に対する信頼感は着実に強くなっている。新型コロナウイルスのワクチン接種状況は国ごとに大きな違いがみられるが、集団免役を獲得できれば外出規制や渡航規制などの解除が進み、輸送用エネルギー需要の回復が進むとみられている。

一方、供給サイドに目を向ければ、石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどのいわゆる「OPECプラス」が展開している協調減産政策が、過剰在庫の解消に大きな貢献を見せている。原油需要の喪失、原油相場の急落に対して、OPECプラスは20年4月に日量970万バレルの大規模な協調減産に着手することを決した。その後は需要環境の改善傾向を確認しながら減産規模を縮小(=増産)する対応を行っているが、今年5月時点でも655万バレルの減産が実施される計画になっている。しかも、原油安や脱炭素、技術的要因など複合的な理由で米国のシェールオイルの生産が回復していないため、OPECプラス主導の需給管理が成果をあげている結果が、現在の60ドル台前半という原油価格の高値に反映されている。

パンデミック発生前の19年の原油相場は50~65ドル水準で取引されていたが、その当時よりも原油価格は逆に高値を付ける兆候を見せている。米国やインドなどからは燃料価格の高騰に不満の声も高まり始めているが、各国の金融緩和や財政出動で資産価格全体の水準が切り上がっていることもあり、原油相場も依然としてピークアウトの兆候を見せていない。

需要回復と供給管理の両輪で、パンデミックで積み上がった過剰在庫の解消を進めているが、2月時点の経済協力開発機構(OECD)加盟国の商業在庫は、2016~20年平均を2,800万バレル上回る29億7,700万バレルとなっている。この過剰在庫が一掃され、OPECプラスの協調減産体制が終了できる状況が実現した際に、本当の意味での現有市場の正常化が実現することになる。