銅価格が12日連続で急落中、経済危機の警告か?

(写真:ロイター/アフロ)

銅価格が急落している。ロンドン現物相場は11営業日連続、NY先物相場は12営業日連続で下落中である。LME銅相場の場合だと、1月16日の1トン=6,300.50ドルから31日の5,570.00ドルまで、僅か半月の間に11.6%の急落地合になっている。

LME銅相場(Cash)

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(画像出所)LME

背景にあるのは、もちろん中国を起点に広がりをみせる新型コロナウイルスの感染被害である。世界保健機関(WHO)は1月30日の緊急会合において「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言したが、マーケットではいよいよ実体経済に対する影響は避けられないとの悲観的な見方が広がりを見せている。

WHOのテドロス事務局長は、貿易や渡航制限の必要はないと発表していたが、米国務省は直ちに中国への渡航警戒レベルを最高である「レベル4」に引き上げ、米国民に中国本土への渡航禁止勧告を行った。更に31日には公衆衛生上の緊急事態を宣言し、過去14日間に中国に滞在した外国人の入国を拒否する措置を2月2日から実施することも決定している。米国以外でも程度の違いはあっても同様の動きが報告されており、WHOの非常事態宣言をきっかけにいよいよヒトとモノの移動が本格的に制限される状態に突入している。

中国は2月3日に春節(旧正月)の連休明けを迎え、本来であれば経済活動が正常化に向かう大切な時期になる。しかし、もはや通常の経済活動を営むのは不可能な状態に陥り始めており、1~3月期の中国経済については「落ち込むか否か」ではなく、「どこまで落ち込むのか」にマーケットの関心はシフトし始めている。

一部の米政府高官からは、これをきっかけに製造業の米国回帰を促したいとの政治的な思惑も公言されているが、既に感染者は2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)の感染者数を上回っており、米政府の意向とは関係なく、新型コロナウイルスによって経済活動が停滞を迫られるのは避けられないだろう。

感染被害の中心である中国・武漢では、各国政府が自国民の引き揚げ(=避難)を進めており、日本のメディアでも連日のように邦人帰還の状況が報じられている。工場などの操業停止はもちろん、消費者マインドの悪化が進めば個人消費にも大きな影響が生じる可能性がある。実際に、コモディティ市場では原油や銅、天然ゴムなどはもちろん、綿花や穀物、植物油などまで、幅広い銘柄が値下がりしている。単純な「リスクオフ」といった投資環境の悪化ではなく、「実体経済の悪化」にマーケットの関心はシフトし始めている。

特に銅については、金融市場の世界では景気の先行指標として注目度が高いため、その銅価格が上述のようにロンドンで11営業日連続、ニューヨークでも12営業日連続で下落しており、しかもその下げ幅が極めて大きくなっていることは、非常事態が発生しているのではないかとの疑心暗鬼を広めている。銅は危機の発生を真っ先に知らせる「炭鉱のカナリア」である。銅価格の動向をみていると、急落が話題になっている株式市場でさえも、まだ楽観的に過ぎる可能性が示唆されている。

2月3日にはいよいよ中国金融市場が春節の連休明けを迎える。中国政府は景気対策や流動性供給にも意欲を示しているが、ここで中国金融市場がパニック化する事態になると、中国経済のみならず世界経済に対する影響も避けられないことが決定的になる。

この問題は、先行きが全く読めないだけに、市場関係者の間でも「一時的な混乱状態に過ぎない」との楽観的な見方と「新たな経済危機が始まっている」との悲観的な見方が交錯している。ただ、銅価格の異常ともいえる急落が続いていることは、市民生活のみならず実体経済にも新たな危機が発生する可能性が高まっていることを警告しているのかもしれない。