サウジ石油施設攻撃は、サウジ版「9.11」になるのか

(写真:ロイター/アフロ)

9月14日、サウジアラビアの石油施設が攻撃を受けた。サウジ・エネルギー省の発表だと一瞬にして日量570万バレルの原油供給が停止し、世界の原油供給の約5%が喪失された。サウジアラビアは、世界最大規模の産油量を誇り、国際原油需給の安定化に寄与し続けてきた信頼性の高い産油国だったが、実際には極めて脆弱だったことが露呈している。

サウジ国防省は攻撃に使用された無人機(ドローン)や巡行ミサイルの残骸を公開したが、必ずしも高度な技術が要求されず、しかも1機あたりで1万~2万ドル(約100万~200万円)と言われる安価な兵器によって、世界経済に恐怖をもたらすことも可能なことが明らかになった衝撃は大きい。

現在販売されているドローンは、一般用でもGPS(全球測位衛星システム)を搭載しているものが多いが、あらかじめ設定したルートで目標地点までGPSで飛行し、目標地点で展開する能力を有している。農薬頒布や測量、さらには警備や物流など広範囲にわたる応用が現実化しているが、これが武器に転用された際のインパクトの大きさに、国際原油市場は驚いた。

サウジは米国と協力してミサイル防衛を強化してきたが、元々が広範囲にわたる国土全てをミサイルから防衛する意思も能力も有していない。それでも高度飛行の弾道ミサイルの迎撃能力は強化していたが、低高度飛行のドローンや巡行ミサイルに対しては全くの無力だった。

2001年9月11日、米国はイスラム過激派テロ組織アルカイダによる同時テロ攻撃(9.11同時テロ)を受け、世界最大の軍事力を有していても、テロ攻撃に対しては無力であることが明らかになった。今回の石油施設攻撃については、「サウジにとっての9.11だった」といった評価も可能だろう。

現在は、まだ石油施設攻撃の犯行主体を特定できていない。フーシ派は犯行声明を出しており、更に石油施設を攻撃する可能性を警告している。一方、サウジアラビアは攻撃に使用されたドローンや巡行ミサイルはイラン製であり、イエメンからの攻撃が可能な距離ではないとして、イランの関与を批判している。実際にイランが関与したのかは分からず、将来にわたって明らかにならない可能性もある。

ただいずれにしても、大規模な原油供給が僅か10機程度のドローン攻撃によって、一瞬にして壊滅的な被害を受ける可能性を有していることに、マーケットは気付かされた。元々、国際原油市場は寡占市場にあり、米国、サウジ、ロシアの3カ国が世界原油供給の4割程度をカバーしている。その一角のサウジの原油供給体制に対する信頼感低下をどのように評価するのか、国際原油市場は需給とは別の地政学リスクの影響を考慮に入れる必要性に迫られている。

サウジとしては、まずは早期復旧能力を見せることで、国際原油市場の信頼感回復を目指すことになる。現時点では、月内に攻撃を受けた石油施設の完全復旧を予定しており、供給は備蓄の活用で既に正常化していると報告している。ただ今後は、ドローンや巡行ミサイルに対する防衛体制を強化すると同時に、石油施設の分散によるリスク軽減などの対応を求められることになる。ドローンは民生部門で新しいニーズを作り出しているが、軍事部門でも注目度が高くなっている。9.11同時テロで米国が新たな脅威に備えたように、サウジも新たな脅威への対応を進めることができるのか、原油市場は注視している段階にある。